ザ・ビートルズのベストギターソング10曲 by 久保憲司

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大ヒットした『ザ・ビートルズ1』の最新エディションの発売が待たれるザ・ビートルズですが、今回久保憲司さんが選んだのは「ザ・ビートルズのベストギターソング10曲」。ビートルズと久保憲司さんとあって、内容はもちろん一筋縄ではいきません。ぜひお楽しみください!(編集部)

1. アンド・ユア・バード・キャン・シング




ビートルズで一番かっこいいギター曲と言ったら間違いなくこれでしょう。ポールとジョージの絡み合うリードギター、そして、鐘を叩くかのように曲を支えるジョンのリズムギター。…ビートルズ最高の瞬間です。ジョージは12弦ギターを弾いています。何回聴いても天国に行けます。

「えっ、ポールがリードギター?」と思う人も多いかもしれませんが、ビートルズのリードギターの名演奏って、ポールがけっこう弾いているんです。ジョージは緊張屋さんで録音の時にミスをするので、時間短縮の意味でポールが代わりに弾くことが多くなり、そういう事がだんだんとバンドの溝を深めていった原因の一つになっていきました。歴史に「もしも」はないけれど、リーダーのジョンが「ジョージいいよ、いいよ、ゆっくりやりな、それはお前の仕事だから」とか言ってメンバー全員でジョージを支えていったら、ビートルズは解散しなかったかもと思うんですけど。でも、初期の頃の曲でもジョンとポールの曲にはビートルズ名物のコーラスがたっぷり入って濃厚になっているのに、ジョージの曲は一人で歌わされ、サラッと作られている感濃厚で、ジョージの曲を聴いていたら「ジョージの曲にももっと時間使ったれよ」とちょっと悲しくなってしまいます。




2. ゲット・バック




ビートルズ最高のロックギター・ナンバーといえば、僕はこれを押します。ジョンのいなたいリードギターが最高です。「えっ!? ジョン?? これまたジョージじゃないんですか!?」という声が聞こえてきそうです。この曲を録音しているとき、ジョージはぐちゃぐちゃうるさいポールにブチ切れて、何日間かスタジオに行かなくなっていたので、ジョンがリードを弾いていて、あの有名な屋上ライブでも「ゲット・バック」はそのままジョンがリードで、ジョージがサイドです。

ジョージがブチ切れたところ、映画『レット・イット・ビー』で撮られてしまってます。ポールがジョージにギターの間違いを指摘し「こう弾くんだよ」と教えられたところで、ジョージは「じゃ、お前が弾けばいいじゃん」とブチ切れてます。凄いシーンです。ポールが亡くならない限り、映画『レット・イット・ビー』はリマスターされないんですかね。それともポールはヨーコさんが亡くなるの待っているんすかね。ヨーコさんが亡くなったら、なるべくヨーコさんの部分を少なくして、リマスターしようと思っているんすかね。それともポールが先に亡くなってしまって、ヨーコさんがけっこうビートルズに貢献してるやんと印象を与えるリマスター『レット・イット・ビー』になるんすかね。そんなことはないか。




3. ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス




「イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』のリードギターの方が素晴らしい」「いやレッド・ツェッペリンの『天国への階段』だ」など色々と意見はあるかと思いますが、僕は音楽史に残る一番の名リードギターといえばこの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」だと思います。でも、これもジョージが弾いてないんです。エリック・クラプトンです。このリードは神がかりです。「エリック・クラプトンは絶対『レイラ』の方が凄い」とか、いろんな意見もあるでしょうが、僕はエリック・クラプトンの一番のプレイはこれだと思います。彼の長い音楽人生でこれを超えるリードギターを彼は弾いてないと思います。

当時神のような存在だったビートルズで演奏するというのがこんな演奏を生んだのか、なんなのか分かりませんが、エネルギーが充満している感じがします。音楽の神様というより、その時代の神様が降りてきたとしか思えない名演です。60年代という時代の空気がこんな奇跡を生んだとしか思えないです。エリック・クラプトン、23歳のときです。しかも自分のバンドじゃなく、他人の曲で。練習はしたんでしょうか? 構成は考えていたんでしょうか? フェイザーみたいな音がしてるんで、やっぱビートルズお得意のレスリースピーカーにギター通したんでしょうか? 気になることで一杯です。

ずっと子供、子供と相手にされなかったヤングカルチャーがカウンターカルチャーとして、社会を根底から覆そうとしている興奮と、変革の不安をエリック・クラプトンは見事に音にしたんだと思います。この演奏が録音されてから47年の月日が経ちますが、未だ色あせません。




4. アイ・フィール・ファイン




ビートルズのかっこいいギターリフということなのに、なんかリードギターばかりになってますね。リードギターもリフということで、いいすか。もうひとつビートルズのギターで歴史的な録音が残されている曲を。音楽史で初めてフィードバックが録音され、しかもイントロに使われるというとんでもない曲です。それまでの人はこんなのただのノイズと思ってたのに、ビートルズはこれがかっこいいと思ったのです。

この曲が録音されて50年経ちますが、このイントロを聴くと、ジョンがギターをアンプに立て掛けたとき、ギターがハウって、ポールが「これだ!」とジョージ・マーティンに「この音を録音出来ないかな」と聞いた光景が目に浮かんできます。その場にいたことないんですけど。でも、そのときの匂いとか空気とか今も全部感じ取れる気がします。ここでまたロックは一歩前進したんだなと。




5. ハード・デイズ・ナイト




すいません。もう一個衝撃のギターイントロを。若い人にもこれは衝撃なんですかね。エフェクトぐちゃぐちゃかけたEDMののイントロとこれを勝負させたらどっちが勝つんでしょうね。僕はいまだにこっちの方がすごいと思います。

長い間この音はどうやって出しているんだと議論され続けてきましたが、Fad9 FにGの音が乗っかっているということなんでしょうね。ジョージが間違って出だしFの所をGと弾いてしまって、それがかっこいいという事になったんでしょうね。ポールがベースで、ジョージ・マーティンがピアノでDを引くと、あの始まるぜというオープニング・コードになるんでしょうね。クラシックや映画音楽なんかじゃよくある始まりなのかもしれませんが、ロックでやったのはビートルズが初めてで、そして、まだ誰もビートルズよりかっこよくやっていない。ビートルズのかっこよさってこれなんですよね。一番最初にやって、それが今も一番かっこいい。『アビーロード』に入っているシンセの音とか今も最高です。同時期のストーンズと比べると、シンセの使い方もセンスいいすよ。やっぱビートルズとかだとモーグの人が横にいて、「フルートぽい音ですか、こんな感じでやればいいすよ」とかプログラミングしたんすかね。そういう記録はないんで、やっぱビートルズがやったんですかね。どうなんでしょう。エンジニアがやらされたのかな。「この説明書読んでやってみて」みたいな。そんな感じがしますよね。




6. レボリューション




なんかダラダラと書いてますね。後半はサラっと行きます。ジミ・ヘンドリクスの登場にビビったビートルズは、自分たちもあんなギターを出そうと試行錯誤しますが、なかなかジミヘンの音にはならず、ジョンはエンジニアのジェフ・エメリックに「お前はまだあの音を作れないのか、この役立たずが、お前みたいな奴は戦場にでも行って鍛え直されてきたらいいんだ」とネトウヨみたいなことを言ってイジメます。ジョンは戦争映画に出て、戦争に行った気持ちになっていたみたいです。あかん、あかん。そんなジョンの嫌味から逃れようとジェフ・エメリックが考えた手法がギターを直接ミキシング・ボードにぶち込むという方法、今では当たり前の手法ですが、これまたビートルズが最初なんです。これでもかというくらい暴力的なサウンドになっています。エレクトリック・ギターの素の音です。ハードコア・パンクのギターの音です。かっこいい!




7. デイ・トリッパー




「ペイパー・バックライター」「ティケット・ドウ・ライド」など中期のビートルズにはかっこいいギターリフがたくさんありますが、ビートルズで一番かっこいいギターリフと言えばこれですかね。これらのリフって、モータウンに影響されたから生まれたと思うんですが、モータウンに影響されたら、こんなかっこいいリフが作れるんですかね。謎です。ビートルズは本当に凄いと思う。




8. ブラックバード




ビートルズはアコギも凄いんで、アコギのギターリフを。ポールの名演です。フォークなアルペジオのようで、ポールお得意のコードストローク、フォークじゃなく、ロックぽい感じになっているのがいいんですよね。海外のアーティストのアコギってみんなロックですけどね。日本人がやると神田川風になってしまうのは血なんですかね。悲しいです。



ロックに、ブルースに行きたいです。日本時がブルースやっても淡谷のり子になってしまいますね。それはブルースじゃなくって演歌ですから。淡谷のり子誰も知らないですよね。ブルースの女王です。






9. 恋をするなら




全然ジョージの名演が出てこない。これはジョージです。12弦がいいすよね。マッドチェスターの感じですよね。日本のビートルズのwikiを見ると、この曲が入っている『ラバーソウル』は“ハードなナンバーにはサウンドの変化が起きつつあるものの、この後に聴かれる「サイケ」色はほとんどない。” と書かれているんですが、どんな耳してるんですかね。一曲目の「ドライブ・マイ・カー」から最後の「浮気娘」までむちゃくちゃサイケですよね。サイケじゃないのは、リンゴが歌うカントリーな「消えた恋」と『ビートルズ・フォー・セール』な「ウェイト」くらいですよ。このジョージの「恋をするなら」なんかもむちゃくちゃサイケです。ビートルズといえば「ハード・ディズ・ナイト」な元気な感じか、このジョージの12弦のサイケな感じを思う人が多いんじゃないでしょうか? 思わないか。そんなの思うの60年代生まれのおっさんですよね。




10. ジ・エンド




ビートルズのギター名演と言えば、これでしょう。これがビートルズの最後になるのかなとうすうす思っていたビートルズのメンバーは、ポールの「この曲ではみんなでギターバトルしようぜ」というアイデアを「よっしゃわかった」と快く受けとった。まずジョンが立ち上がって録音ブースに向かおうとすると、いつものようにヨーコさんもついていこうとするのをジョンは「マザー(ジョンはヨーコさんのことをこう呼んでいた)、ここは俺たちだけでやるから」と言って、4人だけでスタジオに入っていった。そして、このギターバトルが録音された。「ドラムソロは俺のスタイルじゃないから」とドラムソロをやることを頑なに拒否していたリンゴまでドラムソロをやった。ええ話やないか。ポール、ジョージ、ジョンの順番と思われるリードギターだが、誰もあのプレイはポールだ、ジョージだと言えない、みんな上手い。イギリス最高のギターバンドはこうして幕を閉じたのだ。何回聴いても泣いてしまう。

ポール、今これを自分のセットの最後に持ってきているのはどうかと思うぞ。やっぱポールだなと思ってまうぞ。初めてやられた時は、死ぬかと思うくらい感動したけど、この曲は封印しておいてもらいたかった。



(久保憲司)



The Beatles

Rubber Soul

Capitol
1965

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久保憲司

カメラマン&ライター。「ダンス・ドラッグ・ロックンロール ~誰も知らなかった音楽史~」発売中。なんとNO2も出ました。「ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム」 電子書籍「ロックの闘争」お仕事の依頼はkenji.kubo@m6.dion.ne.jpまで。

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