寺崎省子
2015年10月31日05時27分
通勤に使う定期入れには、自作のカードが入っている。バス、地下鉄、JRの乗降駅のほかに、こう記されている。
「若年性アルツハイマー本人です。ご協力お願いいたします」
仙台市の会社員、丹野智文さん(41)は2013年4月、アルツハイマー病と診断された。当時39歳。カードはどこにいるかわからなくなった時に備えて、必ず持ち歩いている。
大手系列の自動車販売会社の営業職で、成績はトップクラスだった。09年秋から記憶力の低下を感じていたが、12年の暮れに「異変」をはっきり認識した。
あいさつ回りで、駐車場に止めた車の中で訪問先のマンションの部屋番号を確認したのに、玄関で番号を押そうとしたら思い出せない。車に戻って再び覚えたが、またわからなくなった。仕方なく紙に書いた。
販売店でも、自分の顧客とわからずに後輩社員に応接を指示し、毎朝顔を合わせている同僚の名前が出てこなかった。「ストレスがひどいのかな」。近くの医院を受診した。
紹介された専門病院と大学病院で計約1カ月検査入院し、病名が確定した。大学病院で主治医から「間違いありません」と告げられた。隣で同じ年の妻(41)が泣きじゃくっていた。
残り:1844文字/全文:2346文字
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞社会部
PR比べてお得!