中国はこれまで、人民元を、米ドルや円と並ぶ国際通貨にするために外交交渉を活発化させてきた。現在は、来月下旬に開催予定の国際通貨基金(IMF)の理事会で、特別引き出し権(SDR)と呼ぶ準備通貨に採用される直前の微妙なタイミングだ。習政権にとっては痛恨事なのだという。
宮崎氏は続ける。
「中国が南シナ海で強硬な対応を取れば、IMFで事実上の拒否権を持つ米国に『SDRを白紙に戻す』と言われかねない。土壇場でひっくり返される事態は何としても避けたい。だが、何もしなければ国内で『弱腰だ』と批判される。にっちもさっちもいかない状況だ」
国内からの反発も避けられない。
習政権は「反腐敗運動」によって、江沢民元国家主席率いる「上海閥」など敵対勢力の粛清を進め、権力の一極集中を図ってきた。南シナ海や東シナ海での「覇権拡大路線」で獲得した国民からの支持を背景に、人民解放軍の統制も強めてきた。だが、今回の米艦船派遣によって、大衆人気に支えられてきた習政権の命運も危うくなる。
宮崎氏は「中国経済の急減速で、すでに習氏の指導力には疑問符が付けられつつある。そのうえ、軍事的にも米国に屈したとなれば、威信の低下は避けられない。『ぜいたく禁止令』などで人民解放軍の不満は臨界点に達している。今後の展開次第では、『上海閥』などの守旧派の復権を許す可能性もある」
まさに崖っぷちだ。