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2015-10-30

フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための映画5本(1)歴史映画編

| フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための映画5本(1)歴史映画編を含むブックマーク フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための映画5本(1)歴史映画編のブックマークコメント

 さてさて、6月実施した「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編」、「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(2)理論・学術・専門書編」、「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(3)フェミニスト批評編」だが、手すさびのつもりで作ったのに思ったり大きな反響を頂いてしまい、「映画」(とくに歴史もの)、「ガチ文学作品のみ」、「女性史」、「まだ翻訳が出ていないフェミニズム選書」、「シェイクスピア関連のフェミニズムもの」などについても選書企画やってもらえないかというリクエストを受けていたのだが、その後いろいろ仕事が増えたりしてなかなか手を付けられなかった。しかしせっかくリクエストを受けたものをほっておくのは教育上よろしくないので、ほそぼそとやろうと思う。

 そこで、イギリス女性参政権テーマ歴史映画サフラジェット』が公開されたこともあり、今日リクエストにあった歴史映画女性史やフェミニズムについて考えるのによさそうなものを5本、紹介してみようと思う。できるだけ新しめのもので、人目に触れにくいけど比較的一般ウケしそうで、かつ私が面白いと思うものを選んだつもりである。どちらかというと「誰が見てもフェミニズム的かどうか」よりは(そんな映画あるわけないし)、歴史上の女性について考えるのによさそうだと思うものにした。既にブログレビューしたものもあるので、部分的ネタの使い回しになってしまうかもしれないが…


・『リベルタリアス 自由への道』(1996)

 ビセンテアランダが監督したスペイン歴史もので、自由を求めてスペイン内戦を戦ったフェミニストたちを描いた作品である。かなり脚色はあるようだが、実際にスペイン内戦ではアナキスト女性たちが志願兵として戦ったらしく、あまり知られていない歴史に触れることができる。尼僧から娼婦までいろいろな境遇の女たちが自由のために戦う様子は感動的だが、最後はかなり悲劇的な終わり方をするのであまり見ていて楽しい映画というわけではない。アルモドバル映画スターであるビクトリア・アブリルが出演しているのだが、残念ながら日本語版ソフトは出ていないようだ(英語字幕のものはあり)。


・『娼婦ベロニカ』(1998)

 16世紀ヴェネツィアの高級娼婦で、才能豊かな詩人であった実在女性ベロニカフランコの半生を描いた伝記映画であるロマンティックに脚色されているが、身分の低い娘が愛する男と結婚できず、当時の女性としては数少ない教養を身につける道であった高級娼婦になるというけっこうシビア人生の選択をあまり暗くならずに扱っている。ゴージャスなヴェネツィアのセットに目がくらみがちだが、ふだんは高級娼婦をいいように利用するのに何か問題が起こると娼婦バカにしスケープゴートにするヴェネツィア社会と、その中で気高く自分意志を持って生きるベロニカの対比が清々しい。

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・『フリーダ』(2002)

 20世紀前半に活躍したメキシコ画家フリーダ・カーロの伝記映画である眉毛のつながった自画像でおなじみのフリーダだが、彼女若い頃の交通事故障害を負っており、その苦痛体験作品にも反映されていて、作品は非常にシュールで時として暴力的である。この映画はそうした障害を持つ女性であるフリーダ人生芸術における苦闘を描く一方、バイセクシャルでかつ恋多き女性であったフリーダが、夫だった画家ディエゴ・リベラをはじめとして思想家トロツキーやらバーレスク女王ジョゼフィーン・ベイカーやらそうそうたる面々と浮き名を流す様子なども描いており、多層的な作品だ。ジュリー・テイモアらしい華やかな画面にヒロインフリーダを演じるサルマ・ハエックの芯の強そうな表情がよくマッチしている。


・『ファクトリー・ウーマン』(2010)

 1960年代に、ダゲナムにあるUKフォード自動車工場で、シート縫製工をしている女性たちが男女同一賃金を求めて起こしたストライキを描いた映画である。いかにも60年代ふうのオシャレなファッションや車がいっぱい出てくる見た目もたのしい映画だが、内容は女性労働運動の場で直面する性差別などツライところも多い。とはい最後は明るい雰囲気で終わる作品だ。可愛くて元気が出てフェミニズム労働運動について考えさせられるところもある映画なのに、日本未公開である

 


・『ベル―ある伯爵令嬢の恋』(2013)

  18世紀英国貴族庶子として育てられた黒人女性ダイド・エリザベスベルの半生を描いた作品であるちょっとドラマティックに脚色されすぎているきらいはあるが、18世紀社会気品溢れるタッチで描く一方、人種差別性差別、そしてそれに負けなかった知性ある女性の戦いをロマンティックな雰囲気で見せている。ヒロインベルを演じるググ・バサ=ロウが大変優雅で美しく、好演している。見た目が豪奢な時代もの日本でもウケそうなのに、これも未公開だった。

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