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松尾仁松尾仁  - ,,,,,,  10:00 PM

スマホの通信料金がタダになる!フィリピンから始まる、世界70億人総オンライン化への挑戦。

スマホの通信料金がタダになる!フィリピンから始まる、世界70億人総オンライン化への挑戦。

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日に日に増す、東南アジアでのスマホ普及率。けれど、スマホを所有している人々の約90%はプリペイド式携帯電話を使用し、ほとんどの時間をインターネット接続のないオフライン状態で過ごしているといいます。今回の「アジア×ビジネス」では、この現状を打破するためにスマホのロックスクリーンを解除することで通信料金を無料にするサービス「PopSlide」を展開するYOYOホールディングス代表・深田洋輔さんにお話を伺いました。聞き手はライフハッカー[日本版]編集部員であり、自身もシンガポールと神宮前でギャラリーショップ「EDIT LIFE」を運営する松尾仁です。


深田洋輔(ふかだ・ようすけ)
大学院で経営学と工学の修士号を取得後、2009年にDeNAに入社。2012年にフィリピンに渡り、同年10月にシンガポールで、YOYOホールディングスを創業。フィリピンのマニラを拠点にリワードプラットフォーム「Candy」、Android向けロックスクリーン広告アプリ「PopSlide」を開発、運営。Echelon Philippines 2014で優勝、Infinity Ventures Summit 2014 Fall Kyoto Launch Padで準優勝、新経済サミットNES STARTUP COMPETITIONで優勝するなど、国内外のピッチコンテストでも注目を集めている。


1人1台が当たり前。フィリピンのスマホ事情。


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YOYOホールディングス代表・深田洋輔さん。現在はフィリピン・マニラに在住。


松尾仁(以下、松尾):まずは、深田さんが今注力されているAndroid端末のロックスクリーンを利用したアプリ「PopSlide」のサービス概要から教えてください。

深田洋輔さん(以下、深田):はい、「PopSlide」は新興国向けのモバイルインターネット料金を無料化するサービスです。具体的にはスマートフォンを立ち上げて表示されるロックスクリーンをユーザーが解除する際、スクリーンに表示される商品の広告やニュース、占いなどのコンテンツを閲覧するたびに少しずつポイントが溜まり、そのポイントをプリペイド式携帯の通信料金に換えることができる仕組みです。

松尾:日本ではスマホはそれなりに高価なので、新興国とAndroidの結びつきがあまりピンと来ないのですが、深田さんが拠点を置かれているフィリピンでスマホはどのくらい普及しているんですか?

深田:それが驚くほど普及しているんです。フィリピンでは今、新品のAndroidが3000円ほどで購入できます。中古なら2000円以下で買えるので、冷蔵庫やエアコン、電子レンジがない家庭でも、スマホは1人1台が当たり前。ストリートチルドレンでもスマホを持っているような状況なんです。と言っても、これほどスマホが普及したのはここ最近の話なんですが。


新興国向けモバイルインターネット無料化サービス「PopSlide」from Infinity Ventures Summit on Vimeo
準優勝したピッチコンテスト「Infinity Ventures Summit 2014 Fall Kyoto」でのプレゼンの様子。


松尾:「PopSlide」以前に、同じ仕組みでブラウザ版のサービス「Candy」を展開されていますよね。「Candy」を運営されているなかで、次のビジネス「PopSlide」へのヒントがあったのでしょうか。

深田:はい、まさにそうです。「Candy」は「PopSlide」と同じようなインターネット料金を無料にするサービスですが、PC、スマホを含むすべての端末に対応したサービスです。フィリピンとインドネシア、タイの3カ国で展開していて、ユーザー数も100万人を越えているんですが、2013年の7月に本格的にオープンしてから1年も経たない頃、スマホからのアクセスがオープン当時の15%から50%近くに跳ね上がったんです。東南アジアでビジネスをしていますが、市場のスピードの早さには本当に驚くばかり。このデータを受けて、スマホユーザーに特化した「PopSlide」をゼロからつくりました。


フィリピンに渡って1カ月でアイデアの骨子が完成。


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プリペイド式携帯の通信料金は、現地のコンビニ的存在「サリサリストア」でチャージされている。


松尾:YOYOホールディングスを立ち上げる前にはDeNAに勤められていたそうですが、インターネット料金を無料化するというアイデアは、日本にいた頃からお持ちだったんですか?

深田:フィリピンに来てから思いつきました。DeNAを辞める前から「東南アジアで勝負をするならこんなビジネスがいいんじゃないか」という案はいくつか用意していたんですが、東南アジアに住んだこともなければ現地の人の声も聞いたことがない。「じゃあ行ってみよう」とフィリピンに行ったら、元々考えていたビジネスプランは現地の人には全く響きませんでした。それで英語学校に通いながら現地のインターネット事情、モバイル事情についてリサーチをしました。インターネットの通信料金が現地のコンビニエンスストアのような店「サリサリストア」で、日常的にプリペイドチャージしながら使用されていることには本当に衝撃を受けましたね。現地の人々が抱えている課題は、インターネットを利用する機器ではなくその料金だということにもフィリピンで暮らすなかで気づきました。みんなスマホを所有していても、ほとんどの時間はオフライン状態なんです。アイデアの骨子はフィリピンに行ってから1カ月くらいでつくりましたね。


パワーポイントの企画書しかなかった設立当初から、脅威の成長を遂げる。


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フィリピンの一等地にあるYOYOホールディングスのオフィスの様子


松尾:1カ月で骨子ができて、2013年の3月に「Candy」のβ版をローンチされたんですね。開発にはどのくらいの期間を必要としたのでしょうか。

深田:実は、会社を設立した2012年の10月にはパワーポイントの企画書しかなかったんですよ(笑)。サービスのモックというか、現地で受け入れられるかどうかの検証を11月と12月にやって、投資家の後押しもあり、2013年の1月からようやく本格的な開発に着手しました。ですから開発期間は丸2カ月、3月の頭に簡易版の「Candy」をオープンしました。

松尾:簡易版を出されてすぐに手応えはありましたか?

深田:ものすごい反響でした。今思うと人に見せるのも恥ずかしいくらいのチープなつくりのサービスだったんですが、簡易版を出したタイミングでPRのために広告予算を1〜2万円ほど使って「どのくらい登録してくれるかな?」と様子を伺っていたんです。当初は1日に20〜30人ほどの登録があって「ちょっとは来てくれているね」と反応を見ているうちに、日々の会員登録者数が数十人から数百人になって「あれれ!?」と。2週間後には1日の会員登録者数が3000人になってサーバーが落ちてしまいました。あとで調べてみたら、どうやら日本でいう2ちゃんねるのような情報掲示板で、影響力のあるブロガーが紹介してくれたようなんですよね。瞬く間に登録者数が30000人を超えて「これはマズい!」と思いました。なぜなら当時はサービスをつくることしかしていなくて、ユーザーからの需要があるとわかってから広告営業をすればいいとのんびり構えていたからです。だから初めはユーザーたちに渡すインターネット通信料金を持ち出しでやっていて「ちょっと待って!僕らのお金がなくなる!」って(笑)。

松尾:30000人にたとえば10円ずつ配るだけでも結構な額になりますもんね(笑) 。

深田:はい(笑)。需要があることがわかったので、このタイミングで事業をスケールさせるための資金調達を行いました。ユーザーに関しては広告予算を使わなくても口コミで増えていくことがわかったので、資金は主にシステム開発と広告営業のために使わせていただきました。


代理店を通さずに、直接営業をかける。


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「PopSlide」で表示される広告。主なクライアントにマクドナルドやネスカフェ、ユニリーバなど。


松尾:システム開発と共に、広告主がいないと成り立たないモデルですよね。今は広告営業に力を入れていらっしゃるんですか?

深田:はい。ユーザーが満足できるような予算を確保するために、広告営業にはかなり力を入れていて、弊社の営業マンが直接、企業から契約を取ってきています。

松尾:フィリピンの広告業界は代理店を通じてのやり取りではなく、直接営業をすることが多いんですか?

深田:日本に比べると直接営業するケースが多いかもしれませんね。代理店もどちらかというと個人事業主に近いような、スタッフ10名ほどの小規模な代理店がほとんどです。

松尾:なるほど。活動の拠点はフィリピンですが、会社をシンガポールで立ち上げられたのには理由がありますか?

深田:節税だろうと言われることがあるんですけど、節税を考えるほど利益が出ているわけではありません(笑)。シンガポールに拠点を構えた理由は、営業上のメリットとカントリーリスク回避の観点が挙げられます。営業上のメリットについてですが、私たちの大手クライアントはマクドナルドさんやユニリーバさん、ネスレさんなど、いわゆるコンシューマー向けのナショナルクライアントで、アジアのヘッドオフィスが大抵シンガポールにあるんです。なので、シンガポールの法人同士だと契約や支払いなどがスムーズです。

カントリーリスクの回避についてですが、フィリピンはとても暮らしやすいですし、東南アジア1の経済成長率を誇る国なので時代の流れをキャッチしやすい国ですが、未だに法律や政治が不安定なので、会社を経営する上ではリスクにもなりかねないと思っています。一方でシンガポール政府は非常に安定しており、東南アジアではよくある理不尽な変更や不安定さなどが起きないため、本社機能を設置する国としては適していると考えています。


貧困の定義を"機会"で図り、生まれたビジネスモデル。


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フィリピンでは、スマホ片手に時間を過ごす人をよく見かける。


松尾:インターネットは世界の仕組みを変える産業革命だとよく言われますが、これからはテクノロジーの革命のスパンがもっと早くなっていくでしょうね。

深田:まさにそう思います。東南アジアはまだまだ豊かとは言えなくて、中間層だと言われている人々も月に5〜6万円の所得で暮らしています。教育を諦めたり、十分な医療が受けられていないという現実もあります。私たちがインターネットの通信料金を無料化するサービスを始めたのも、インターネットで得られる情報がすべての問題を解決するきっかけになるんじゃないかと信じているからです。貧困の定義ってお金で図るだけじゃなくて"機会"でも図れると思っていて、教育を受ける機会があったり職業や住む場所、食事を選ぶ機会があれば、その暮らしには豊かさがある、と思うんですよね。ネット通信があれば医者がいない地域でも医療の知識を得られるし、教育もそう。プログラミングの技術も今はオンラインで無料で学べる時代ですから。

現在は世界の2/3が通信料金不足によってオフラインの状況だと言われています。それらすべてをオンライン化することができれば、いろんなプレーヤーが生まれてさまざまなオンライン事業が始まります。あらゆるサービスの中からユーザーはいいものを選ぶ。そうすると競争が生まれて、個々のサービスの質が上がっていく。そんないい循環を生み出すためのトリガーとしてサービスを展開しています。


仕事選びが人生選び。大きな課題を解決するために働きたい。


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国内外のピッチコンテストでも注目を集める深田さん。
今年行われた新経済サミット「NES STARTUP COMPETITION」では1位に選ばれた。


松尾:世界に"機会"を与え、貧困問題を解決するために新興国のオンライン化を図る。素晴らしい志だと思います。お金を儲けるためではなく、世の中にとっていいサービスをという考えに至った背景には何があるんでしょうか?

深田:元々大学では分子細胞生物学という領域を学んでいて、大学院では工学と経営学の修士号が両方とれるようなコースを専攻しました。ライブドアの堀江貴文さんが話題になっていた頃だったこともあって、勉強として興味があるのは生物工学だけど、学びたいのはビジネスだと思っていたんです。進路を考えるとき、自分の性格的に、朝起きてから夜寝るまで仕事以外はしないんだろうなと考えていました。家族や友達付き合いもとても大切だけど、きっと仕事をする時間が圧倒的に多いんだから、仕事選びが人生選びだと思ったんです。じゃあ自分の人生をかけて面白いと思うこと、胸を張って人に言える仕事って何だろうと考えたときに、自分なりのポリシーや価値観を持って大きな社会問題を解決するための仕事だと思ったんです。

その仕事は、私が最も影響を受けた貧困層向けのマイクロファイナンスを提供するグラミン銀行の創設者、ムハマド・ユヌス博士が行ってきたように多くの人々の暮らしを変えることができて、なおかつビジネスとして成り立つものがいい。世界70億人のうち2/3以上が抱えているオフライン問題を解決するためのプロジェクトを行うことは、達成までの難易度は高いけどワクワクしています。GoogleやFacebookも同じ課題を解決しようと大きなプロジェクトを動かしていることもあり、私たちが挑戦している領域は間違っていないと確信しています。正直なところ、世の中にとっていいことをやっているというよりは、楽しいからやっているという部分が大きいんですよね。

松尾:未来を感じるビジネスだと思います。今後のビジョンをお聞かせいただけますか?

深田:現在、「PopSlide」を展開しているのはフィリピン、インドネシア、ベトナムの3カ国です。今後はインドをはじめとする他国にも展開するために、今年の5月には資金調達も行いました。東南アジア、南アジアの人々がより多くの"機会"に恵まれるような社会になるスピードを、私たちの力で少しでも早めることができればいいと思っています。




深田さんが勝負の場所としてアジアを選んだのは「変化の早い東南アジアの市場で、日本人がIT分野で世界でも活用されるようなサービス、結果を出すことがこれからの日本人の希望になるはず」と考えたからなのだそうです。今は決して豊かとはいえない新興国の社会が、インターネットを通じて機会を得、豊かになる。深田さんの志のあるお話を伺って、その日は決して遠くないと感じました。


(取材・聞き手/松尾仁 文/宗円明子)

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