小中高校の教科書を発行する三省堂(東京都)が、公立中学校の校長ら11人を集めた会議で1人5万円の謝礼金を渡していたとして、文部科学省は30日にも再発防止を求める指導文書を同社に手渡す。教育委員会などが学校で使う教科書を選ぶ際に影響を与えかねない行為で、「公正性・透明性の確保に疑念を生じさせる」と指摘する。

 文科省によると、三省堂は昨年8月23日、都内のホテルで開いた「編集会議」に公立中学校の校長ら11人を集め、検定のため文科省に提出済みの中学英語の教科書の内容を示して感想などを聴いた。検定中の教科書を外部に見せることは規則で禁じられている。その際、宿泊費や交通費とは別に、謝礼として1人5万円の現金を渡したという。会議の後には懇親会も開かれ、その費用も負担したという。

 文科省は、教員の意見を聴くだけであれば実質的な見返りを求めるものと言えず、謝礼金を渡したこと自体は違法といえないとみている。ただ、11人中4人はその後、教育委員会の採択に助言ができる立場の「調査員」に任命された。