【ワシントン=吉野直也】米海軍制服組トップのリチャードソン作戦部長と中国海軍トップの呉勝利司令官は29日、ビデオ回線を通して約1時間会談し、偶発的な衝突を回避するための対話の継続で一致した。中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロ)内の海域を米海軍の駆逐艦が航行し、両国の緊張が高まったことを受け、開いた。航行後の米中軍幹部の会談は初めて。
米国防総省のデービス報道部長は「会談では対話を維持する重要性を確認した。艦艇の相互訪問や軍高官による交流について意見交換した」と記者団に語った。
リチャードソン氏は今回の航行が国際法に基づく「航行の自由」を確保するための行動だと説明した。「特定の国を標的にしたものではない」とも伝えた。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部加盟国が対立する南シナ海の領有権問題で「米国は特定の立場を取らない」と述べた。
中国側は「中国の主権と地域の安定を損ねる」などと反発したとみられる。米海軍は現地時間の27日、横須賀基地配備のイージス駆逐艦「ラッセン」を南沙(英語名スプラトリー)諸島のスービ(中国名・渚碧)礁などに派遣した。
中国の人工島造りを通じた軍事拠点化に同盟国や友好国の不満や不安は高まっている。カーター米国防長官はそれを和らげるために航行の自由作戦を「数週間から数カ月続ける」と明言。中国側も対抗措置を宣言している。27日は中国艦船が米駆逐艦を一定距離を保ち、追尾、監視した。大きな混乱は起きなかったものの、今後はその保証はない。
カーター、リチャードソン