最初に言ってしまいますと、この記事のタイトルは読者獲得のためわざと煽り気味に設定しておりまして、ぶっちゃけ個人出版で大手出版社に勝てるワケなんぞありませんし、空前絶後の確率変動が起きて本当に下克上が起きたとしてもメジャーとマイナーが入れ替わるだけの話にすぎず、従って本記事に厳密かつ正直なタイトルをつけるならば、
〔個人出版者が(大手出版社の推す作品と比較してあきらかな格下と見られないよう)読者の信頼を得るために必要な最低条件とは?〕
くらいのものなので、どうか僕に石を投げることだけはお止めいただきたい。
だって、だってだって、火属性のどっかのレディが「あんたいい加減タイトルの重要性に気付きなさいよ! 一人でも多くの読者に読んでもらうためにはそこから工夫しなきゃダメなの! 覚悟してピエロになるのは大得意でしょうが! やれ!」って言うんだもん!
わかってくださいよ! 僕だって辛いんですよ! やりたくてやってるわけじゃないんですよ!
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はい、泣き言はここまで。本題。
先日、電子書籍の個人出版に携わる人たちで小さな会合が持たれました。その名を〔でんでんビアバッシュ!! vol.1〕と申します。
ええ、説明文にある通り、ぶっちゃけただの飲み会です。
酒が入った状態で好き勝手なことをくっちゃべるわけですから、
#でんビア pic.twitter.com/K0364rtYey
— ろす@中殺界 (@lost_and_found) 2015, 10月 28
敵対勢力同士が殴り合ったり
そのくらいのことは当然起きるわけですが(当然?)そこで交わされる話題はほぼ既知のもので、アルコールが入っていることもあって単なる愚痴や世間話的よもやま話に終始しがちです。
けども、わざわざ顔を合わせて行うコミュニケーションの主軸は話の内容そのものではないんですよね。
今回の前哨戦ともなった焼き牡蠣電書オフでも痛感したことなんですが、大切なのはそれぞれの人の顔を見て話すこと。
隙間社さんの記事でも触れられているんですが、同じ電書界隈とはいえ参加者の顔ぶれは実に多彩でした。ラノベ畑の作家、文学畑の作家、ゲームクリエイター、ライター、シナリオライター、編集者、NPO法人の代表、趣味に近しいところで成果物を発表する場として電子書籍を選んだ個人。人間なんてそれぞれ価値観も考え方も違うわけで、物事を取捨選択し優先順位をつけるフィルターの精度も目の粗さも違います。
なのに、気が付けばわりと「わかりきったいつもの話」に終始していたりする。
なかなか自著が売れませんねぇとか、電子書籍に限った話じゃないよねぇとか、コンテンツ産業自体が斜陽に差し掛かってるのは間違いないねぇとか、その上でどう生き延びていけばいいんでしょうねぇとか……これって冷静に考えれば不思議な話なんですよね。
逆説的に言えばみなさんが飛びつく話はそれだけプライオリティが高いということ。
そして、その飛びつきぐあいのちょっとした違いとか、差し迫った課題としての重さのようなものは、顔や声音からでないとなかなか伝わってきません。ネットや書類の上で文章になると良くも悪くも単なる情報になりますから、大事なことでも正直どうでもいいノイズに紛れて埋没しがちですしね。本当に重要なことって、誰かと情報交換しながら相対的に見極めていくしかないんだろうな、と。前回なんとなく感じたことが、今回はほぼ確信に変わりました。
で、それをふまえて、まずは今何をすべきかの優先順位を見つめ直すもよし、相対的な自らの立ち位置と進行方向を再確認するもよし。時には漠然とした未来予想図に裏付けが取れて予知に近いものを得ることもある。
今回はつまり、そういう話です。
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以下、ひとつらなりのまともな文章に起こそうとすると大変なので、アイデアメモっぽく。
【現状認識】
電子書籍界隈は、すでに「アマチュアっぽさ」を許容しない世界になっている。
数年前に大手出版社が雪崩を打って電子書籍販売に参入してきた時点で、日本の読者が最初に触れる電子書籍は商業出版の作品ということになった。ゆえに、インディーズはそれに劣るもの、という認識がすでに定着してしまっている。
売れる売れない以前に、有料で販売する以上、アマチュアっぽさを排除することが最低条件。
しかし、表紙の作成にコストをかけて中身を吟味しても、読者がそれを手に取りお金を払ってまで購入してくれるとは限らない。プロっぽいものが無料ないし格安ならDLしてみよう読んでみようとはなるが、そこまで達していなければ無料の作品でさえ「どうせ誤字脱字誤表現のオンパレードで読むに値しない」と判断されてしまう。
単純に言えばインディーズに今求められているのは、読者の信頼感。
【信頼獲得のための具体策】
単純に言えばレーベル化の方向に進むべき。
作者個人ですべてをまかなうセルフパブリッシングそのものはすでに(読者の信頼感という意味で)限界を露呈している。発表前に第一読者として原稿をチェックし、著者が気付いていない欠点を指摘して改善策を提示、可能な限りの誤字・脱字・誤表現をなくしていく編集者の職能は、読者の信頼獲得に必要不可欠の要素であると認めるべきであろう。
【当面の課題】
しかし、そもそもインディーズレーベルそれ自体の知名度がない現状、無名のアマチュア作家の個人出版も、無名のインディーズレーベルも、どちらも等しく信頼感はない。
編集者の立場からすると、時には著者に対して「これではダメです、直して下さい」と原稿を突き返すことをしなくてはならないが、読者に信頼感のない編集者は、著者にも同じく信頼感がない。それ故に「通常ここまでは常識」というダメ出しすら苦慮をするケースが多々ある。
プロ経験のある著者であれば、読者に指摘される前に欠点を指摘してくれる編集者は有り難いものだとわかっているが、インディーズの世界で著者に経験を求めることはそもそも不可能。大手出版社においても新人作家が編集のリテイクや修正依頼を受け入れるかどうかの分水領は「言う通りにすれば本になる、売れる」という一線にあった。
こいつの言うことを聞いても売れないと著者に思われてしまった時点で、編集の言葉は(たとえ妥当であっても)力をなくしてしまう。
歴史と実績のある大手出版社の威光を羨みながら苦戦するインディーズレーベルの編集者と、自らの原稿の不備にうすうす気付いていながら誰も信じられずに一人でリリースする著者。本来なら手を取り合うべき両者がバラバラのまま市場に打って出て自滅しているだけという現状がある。
どげんかせんといかん。
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……という辺りまでが〔でんでんビアバッシュ!! vol.1〕において永元の近辺で話されていたことの概要でありました。
こうしてまとめてみると、わりかしマジメな話もしてたんですねえ、気付かなかった(?
で、これを踏まえて、次回は「じゃあどうすんのよ?」って話をしたいと思います。
そこからはもう「ぼくはこんなことをおもいましたまる」の世界なので、これを叩き台にしていろんな人が意見とか寄せていただければいいなと思っております。
ほんとはそこまで一気にやるつもりだったんだけど、今日はもうめんどくさくなってきた……。
だそく。
今回は初対面の方もたくさんいらしたんですが、何人かの方が自著の〔コヲロコヲロ〕を話題にして下さいまして。ざっくりまとめると「あれはいろいろもったいなかった、惜しかった」ということになるんですが、つまり「まだ利用価値がある」のかな、と。
商業出版で出すことはまず無理、しかし一定の水準は超えている、インディーズ書籍の試金石としていろいろ人を巻き込みながら利用できる部分もあるんじゃないかしらん? などということを思わなくもなく、次回はそのへんも交えて話していこうかと。
しかしまー、こういう会合で一番いいなーって思うのは、俺は独りじゃないんだなと実感することですよね。なんだかんだでそれが一番大事なんだろうなって。
持っている情報を整理し、課題に優先順位をつけ、自分の立ち位置を再確認する。わかりきったことであっても、自分一人で全てを処理しようとすると、課題の優先順位を見失ってすぐ行き詰まっちゃうんですよね。
個人的には今後もちょいちょい、同種の会合には参加していきたいと思います。