朴槿恵(パク・クンヘ)大統領はこれまでの2年8カ月の在任期間中「外治(外交)と外交安全保障政策に優れている」との評価を何度も聞いた。ところが最近はそのような評価を揺るがす事態が相次いでいる。
外交・安全保障政策に一つの正解があるというケースはほとんどない。中国の顔色をうかがい過ぎれば、米国との同盟関係に亀裂が生じる恐れがあり、米国にばかり配慮すれば、中国から携帯電話の輸入禁止措置を受けるかもしれない。そうなれば韓国経済はたちまちオールストップしてしまうだろう。どちらか一方を選んで他方との関係に問題が生じる状況に直面したとき、ただ「政策が間違っている」と批判するわけにもいかないだろう。しかしもしこれまでの政策で誰かが虚偽の情報を決定権者に伝え、それによって今の状況がもたらされたとすれば、事情は当然異なってくる。
南シナ海で中国が人工島の建設を進めている問題について、米国のオバマ大統領は朴大統領の面前で「韓国は中国に対して声を上げなければならない」と述べた。誰が見ても異常な兆候だ。ところが外交政策に責任を持つ尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部(省に相当)長官と大統領府外交安保主席は「何の問題もない」という言葉を繰り返すばかりだ。それから数日後、米国は南シナ海で中国に圧力を加える軍事行動に乗り出したが、直後に韓国大統領府の幹部は公の席で「われわれはこの問題で何らかの立場を表明する必要はない」と言ってのけた。米中両国に挟まれて明確な立場を表明できないのであれば、何も言わなければよいではないか。何のために無用なコメントをマイクに向かって口にするのか理解できない。
今回さまざまな困難を乗り越えて開催される韓日首脳会談もそうだ。韓国政府はこれまで「従軍慰安婦問題で日本政府としての謝罪がなければ、日本の首相とは会わない」との立場を繰り返し表明してきた。もちろんそのような選択も可能だ。ただしそれによって自らが窮地に追い込まれる可能性があることは、外交の門外漢であっても分かることだった。ところが韓国外交部は自分たちがコーナーに追い詰められ、後戻りできないことを実際に確認した後になって「やはり駄目だ。戻ろう」と言っているようなものだ。外交関係者の間では「現政権発足直後、日本との関係改善が必要との報告書もあったはずだが、大統領はこれに目を通しても何も言わなかった。その後は政府内で誰も日本との首脳会談について口にしなくなった」という話がすでに定説のようになっている。大統領の気分を害することを恐れ、自分たちがコーナーに追い込まれていることを知りながらも、誰も何もしなかったということだ。