ガンダム安彦氏が「ORIGIN」に託した情念

シャア・アズナブルは何のために戦うのか

――ジオン・ズム・ダイクンがザビ家に暗殺されたかどうかわからない設定になりました。

暗殺されたという設定だと、ザビ家は政権を乗っ取った悪役だという勧善懲悪ものになってしまう。それはガンダム的じゃない。違うだろうとずっと前から思っていた。だから、ダイクンの死は病死のように描きたかった。

ダイクンの側近のジンバ・ラルが、暗殺されたと思い込み、シャアに吹き込もうとするんだけど、シャアはそれを上の空で聞いている。つまり、シャアも父が暗殺されたとは思っていないんです。

インタビューに答える安彦総監督(撮影:梅谷秀司)

――確かにそういうシーンが出てきますね。

ジンバ・ラルはシャアとセイラの兄妹を復讐に駆り立てようとするんだけど、2人にそんな気はさらさらない。それでどうなるものでもありませんから。

――でも、シャアはザビ家への復讐のために生きているのでは?

それは、母親が不遇の死を遂げたことに対する復讐です。「よくもお母さんを殺したな」っていう。思想家・政治家である父親が殺されたことに対する復讐ということであれば、社会性を帯びた行動になる。でも、シャアの復讐の動機は社会的なものではなく、個人的な母親の恨み。復讐の動機が稚拙です。

思い至ったシャアの復讐の動機

――「機動戦士ガンダム」に出てくる登場人物の何気ない一言が、オリジンでは重要な意味を持つということが多々あります。そういうセリフに重要な意味があると、当時から考えていたのですか。あるいは、オリジンのストーリーを作るにあたって、そのセリフを膨らませようと思ったのですか。

当時から引っ掛かっていたものもあれば、今回あらためて気づいたこともある。ストーリー作りに際しては、アドバイザー的なスタッフたちとブレーンストーミングをときどきやっています。そうすると、僕が気づいていなかったセリフが出てきたりする。

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