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紀勢線の“大蛇” 特急「くろしお」381系が30日に引退へ 「故障なくよくここまで」ベテラン運転士感無量
老朽化に伴う新型車両の導入のため、引退することになったJR紀勢線などを走る特急「くろしお」381系が30日、ラストランを迎える。国鉄時代の昭和53年から約40年にわたって旅行客らを運び続け、鉄道ファンに愛されてきた車両。長年運転に携わってきたJR西日本の紀伊田辺運転区のベテラン運転士、中村孝雄さん(55)は「故障も少なく良くできた車両。ここまでよく走ってくれた」と感慨深げに話す。
中村さんが国鉄に就職したのも、381系が運転開始した53年。ディーゼルカーの修理などにあたる部門で見習いの毎日を送る中、紀勢線が電化され、381系が導入された。
「すごい電車が来た」「ディーゼルとは加速力が違う」。先輩運転士らの話を聞くなどするうち、あこがれを持つように。58年に運転士になった直後、381系を運転する機会に恵まれたという。「一段高い所に運転台があり、視界が広く感じて。駅では子供たちがホームから写真を撮ったり手を振ってくれたりして、うれしくなりました」
381系は、振り子の原理で車体を傾け、カーブの区間でも高速走行できる「自然振り子式」の電車。カーブでは一般車両よりも最大時速で20キロ速く走行できるのが特徴とされる。
「カーブの多い紀勢線では特に、振り子のメリットが発揮されていた。スピードのロスが少なく、特急としての『速さ』につながっていました」と話す。
故障が少ないことも381系の特徴の一つだが、車両の特徴は運転士の技術や知識があってこそ生きる。「どこで加速し、減速するか。故障の際はどう対処するか」。381系との“対話”の日々だったという。