先週、俳優の萩原流行さんがバイクの事故で亡くなりました。去年、自動二輪の事故で亡くなった人は約700人で、死亡率は四輪車の5倍です。こういう事故をなくす方法は簡単です。自動二輪の速度をもっと制限すればいいのです。

19世紀に蒸気自動車が初めて登場したときは、時速2〜4マイル[3〜6km]で走らなくてはならないという法律がイギリス議会で成立しました。日本でもバイクの制限速度を時速10kmに制限したら、死亡事故はなくなるでしょう。

たぶん命を大事にするよい子のみなさんは賛成すると思いますが、おとなのみなさんは反対します。それは彼らが、実は命より経済性のほうが大事だと思っているからです。こういう関係はトレードオフといって、1か0かの選択ではありません。

それなのに坂本龍一さんや村上春樹さんは「金より命」だから原発をやめろといっています。こういう芸術家が論理じゃなくて感情で考えるのはしょうがないのですが、政府もこういう感情論に振り回され、新しいエネルギー基本計画では原発を減らして、太陽電池などの再生可能エネルギーを増やそうとしています。

しかし太陽電池は雨の日などは使えないので、それにそなえるバックアップの電源が必要です。これは安い石炭火力発電所を増やす結果になります。「脱原発」をめざしているドイツでは、これから17基も石炭火力を増やす予定ですが、石炭火力は空気を汚します。


中国では、晴れの日でも大気汚染がひどく、曇りみたいです。これは天安門の写真ですが、毛沢東の顔がぼやけてますね。清華大学などの調査によれば、毎年120万人以上が石炭による大気汚染で亡くなっているそうです。二酸化炭素(CO2)もたくさん出すので、地球温暖化や気候変動の原因になります。

要するに、バイクも石炭も原発より危ないのですが、やめようとすると多くの人が反対するので、原発だけを悪者にしているのです。そういう気持ちはわかりますが、政策を気持ちで決めてはいけません。反対する人が少ないからといって火力発電を増やすと、環境は悪くなり、よい子のみなさんの健康に害を与えるでしょう。

のほかの記事を読む