2015-10-29

自称心理学に詳しいという人に食事に誘われて、ちょっとこじゃれたビストロに行った。大きくもなく、小さすぎもせず、壁にルノワールポスターとかは掛かっていなくて、生の切り花が活けてあるような店。

テーブルについて心理学の話を振ると、フロイトはさー、とか、ユングはさーとかいってきて、むかしの人たちの学説レクチャーをしてきた。

それはまあいいとしよう。

注文をすると、まず、小さなバスケットフランスパンが盛られて、運ばれてくる。これに岩塩エクストラバージンオリーブオイルをつけて食べてくださいと店員さんが言う。ためしにやってみると、本当においしい。大地の味がするというか、素材そのままの味がするというか、とにかく、うそのないおいしさ。

テーブルを挟んで座っている人は、俺、手相も見れるんだよねーとかいって、手を取ってまじまじと見つめてくる。これ、どこで読んだのかなーとおもいながら、まあ悪い気はしないので、されるがままにする。

問題は、その後だ。

すいませーん、バケットおかわりくださーい、と彼は手をあげて店員さんを呼ぶ。

は?

バケット?

ああ、この、パンを入れてあるカゴのことを、バケツだと思ったのだよね?

だって、このパンはバゲットだもの

店員さんはパンの入ったカゴをもってきてくれる。

彼と私はもう一切れづつとって、食べる。

このバケット、ほんとおいしいよねー

彼、ひょっとすると、バゲットのことを、バケットと思い込んでる?

心理学に詳しくて、学問ぽい雑学のあるところをアピールしてくるわりに?

そのままサラダからメインの料理にいって、好きなクランベリーのソルベがあったから、ちょっと頼みたいと思ったけど、今日はよした。

店を出て、彼が手をつなぎたがっているのを感じたけれど、何気ない風を装って、そのまま最寄りの駅まであるいて、じゃ、といって帰ってきた。

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