トップページ文化・エンタメニュース一覧阿波踊りパリ公演へ 広めたい踊りの心
ニュース詳細

阿波踊りパリ公演へ 広めたい踊りの心
10月29日 13時22分

阿波踊りパリ公演へ 広めたい踊りの心
k10010286721_201510291320_201510291321.mp4
日本を代表する踊りの一つ、徳島県の阿波踊りが10月初め、フランス・パリで披露されました。ヨーロッパは今、漫画やアニメといった、いわゆる“クールジャパン”に人気が集まっていますが、今回披露されたのは、躍動感あふれる独特のリズムを持つ伝統の踊りです。毎年、大勢の人を魅了する阿波踊りが、異国の地でどのように受け止められたのでしょうか。
(徳島放送局 坂野祐介記者)

寛容さに感動 阿波踊りをパリへ

10月初め、フランス・パリの広場で、徳島県の阿波踊りが披露されました。あでやかな女踊りや躍動感あふれる男踊りが人々を魅了し、太鼓や三味線などによる“ぞめき”のリズムが、響き渡りました。
パリ公演を企画したのはフランス人ジャーナリストのレジス・アルノーさん(44)です。長年、日本の文化を取材し、大手新聞・フィガロ紙などで海外に発信してきました。20年ほど前に初めて阿波踊りを見た時、大きく心を揺さぶられたといいます。
本場、徳島の阿波踊りでは、毎年祭りが開かれる8月の4日間で、8万人が踊るともいわれます。「同じ阿呆なら踊らにゃ損々」と歌われるように、踊りに垣根がないのが特徴です。留学生や観光客など、十数か国の人も入り交じって踊っています。アルノーさんが注目したのはそうした寛容さでした。

「何万人もの人が、同じしぐさをして踊るという、祭りから受ける印象は『連帯感』です。そこには、貧富の違いも、職業の違いも、年齢も関係ありません。そこにみんな感銘を受けるのだと思います。阿波踊りはたった一晩でも互いの国籍や宗教を越えることができる。世界中の誰をも感動させられる」(アルノーさん)

多様な人種が暮らすフランスで踊る意味

アルノーさんは、国際社会はますます複雑になっていると言います。今、ヨーロッパが直面している、シリアなど紛争国からの難民たちの受け入れも背景にあります。フランスのアルノーさんのふるさとの近くでも、9月、市の公共施設が、難民受け入れセンターになりました。

「フランスはもともと非常にオープンな国で、多様な文化、そして異なる信仰の人々が暮らしています。しかし、グローバリゼーションが進むことによって緊迫な状況も引き起こすこともあります。世界中の人々が共に生きていくことは、必ずしも簡単なことではありません」

阿波踊りの原点は平和への喜び

一方、このパリ公演に徳島市から特別な思いを込めて出演したのは、阿波踊りの名人、岡秀昭さん(74)です。
岡さんの原点にあるのは、戦争と阿波踊りの関係でした。戦時中、阿波踊りは、時世にそぐわないとして、中止に追い込まれた時期があったといいます。終戦を旧満州で迎え、1年後に家族と引き揚げてきた岡さんは、そうした歴史を経て復活した阿波踊りの記憶を、鮮明に覚えていると言います。

「5歳で初めて見た阿波踊りは、町内のおばちゃんが三味線を弾いて、みんなで踊ろうかと始まったそうです。墨だらけの顔だったり、真っ白におしろいを塗ったりした人がいて、何もすることがなかった時代に、一番の娯楽だったんでしょう。当時の踊りは、自由になった喜びでいっぱいだったと思います。これが阿波踊りの原点です」(岡秀昭さん)

パリでつないだ心の輪

パリ公演は、徳島からの約30人の踊り手が出演して、10月の初めに2日間の日程で開催され、およそ5000人もの観客が詰めかけました。岡さんは集まった人たちに「心ひとつにして一緒に踊ってください」と呼びかけました。その声に応えて、パリの市民たちが次々に踊りの輪に加わっていきました。参加したフランス人の中には、「阿波踊りを習いたい」とか、「みんなで感じた一緒に踊る思いを伝えていきたい」と語る人もいて、日本人とフランス人が心をひとつにして踊ることができました。

アルノーさんは、来年秋をめどに再びパリで、数百人の踊り手が参加する大規模な阿波踊りを披露する計画です。
「すべてのフランス人がこの阿波踊りを体験する機会を持ってほしい。阿波踊りはすべての人が1つになれるというすばらしい証なんです」

関連ニュース

k10010286721000.html

関連ニュース[自動検索]

このページの先頭へ