男児の遺体発見現場となった日野市の山林

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 親族とみられる男性は記者の問い掛けに対し、たったひと言だけ言い残して走り去った。「自殺ではないと思っています」と―。

 東京都日野市の山林で26日夜、近くに住む小4男児(10)が遺体で発見された。

 全裸の状態だった男児の首にはビニールひもが巻かれており、近くの木の幹に結ばれていた。後ろ手になった両手と両足にもビニールひもが巻き付いていた。衣類や靴は近くに置いてあった。死因は首の圧迫による窒息死と判明した。

 警視庁日野署は自殺と事件の両面で捜査を始めたが、一夜明けの27日には早くも「自殺の可能性が高い」との見方を示した。遺体に防御創などの外傷がなく、現場に他者がいた痕跡もなかったことを根拠に事件性は低いとした。

 ところが、警察の見解に対してインターネット上などでは異論が噴出。テレビ各局のワイドショーの司会者、コメンテーターからも「10歳がこのような方法で自殺することは可能なのか」「遺体の状況があまりに不可解すぎる」といった声が相次いだ。全裸だったことや遺書が発見されていないことも、疑問の声を後押ししている。

 27日夕方、現場で取材をした記者が男児宅の前にいたところ、親族とみられる男性が自宅を出てきた。「お子さんについて、ひと言お願いします」と問い掛けると一目散に駆け出したが、記者がさらに追いすがると「自殺ではないと思っています」と答えた。その後の質問には一切答えずに走り去り、約1時間後に帰宅した際も記者の問い掛けに無言を貫いた。

 当然の話だが、家族を、特に子供を亡くしたばかりの人に思いを尋ねても答えが返ってくることは極めてまれだ。何よりも大切な存在を失ったことについて、あまり時間も経っていないような状況で赤の他人に対して語ってくれ、というのは身勝手な注文と言えるのかもしれない。

 ただ、取材する側としては肉声を聞きたいから失礼を承知で問い掛ける。すると、時として胸の内を明かしてくれることもある。今回、親族とみられる男性がたったひと言だけ「自殺ではないと思っています」と話してくれたのは、警察が示した見解を容易に受け入れることは出来ない、というメッセージだったのかもしれない。