あなたが中学校の数学の先生だったとしましょう。
生徒に『三角形の内角の和は何で180°なんですか？』と訊かれたら、あなたはわかりやすく答えてあげられるでしょうか？
即座にわかりやすい解説ができるなら、あなたは少しだけ数学通です。
ちなみに答えは、こんな感じ↓
すごくわかりにくい図ですが許してください（笑）
左の三角形ＡＢＣにおいて、点Ａを通り辺ＢＣと平行な線を引きます。また、辺ＡＢを少しだけ伸ばしてあげます。すると平行線に対して同位角は等しいので赤い角の角度は同じです。また錯角は等しいので青い角の角度も同じです。今、角Ａと赤い角と青い角を足すと直線、つまり180°になりますから、すなわち角Ａと角Ｂと角Ｃの和は180°です。
これ、一度は必ず習うはずなんですが、そのうち「そんなものだ！」と思ってしまうため、きちんと証明できる人は決して多くありません。
ですから即座にこの証明を思いついて、質問に答えてあげられる人は、三角形のこの性質を真に理解していると言っていいでしょう。
ですが、今日の本題はこれからです。（すいませんｗ）
あなたが無事、生徒に三角形の内角の和が180°であることを証明してあげたとしましょう。次に生徒は、こんな質問をしてきました。
『ふーん。じゃあ内角の和が180°じゃない三角形ってないんですか？』
あなたは何て答えるでしょうか？
この質問に対して即座に、的確な答えを述べられる人は、かなりの数学通です。あらゆる物事の理由を探り、一つ一つ思慮深く考えている人と言っていいでしょう。
実はこの質問の答えは「ＮＯ」です！
内角の和が180°じゃない三角形は、実際に作ることができます。
では今から実際に、その三角形の作り方を紹介しましょう。
まず地球儀を用意します。
すぐ用意できない方は頭の中で結構ですｗ
北極点に立ってください。
そこから好きな方向に、経度線に沿ってまっすぐ進んでください。
で、ある程度進んだら、左に直角に曲がってください。
あ、一周する前に曲がってくださいｗ
そのまま緯度線に沿って、暫くまたまっすぐ進んでください。
で、ある程度進んだら、左に直角に曲がってください。
あ、一周する前に曲がってくださいｗ
経度線に沿ってまっすぐ進むと、北極点に戻ってくるはずです。
さて、ここであなたが描いたのは三角形ですね。
それでは三つの角の大きさを振り返りましょう。
まず最初に曲がった角は、９０°でした。
次に曲がった角も、９０°でした。
最後に北極点ですが、行きの道と帰りの道は同じではありませんから、ここでの角度はゼロではありません。仮に x°(x > 0)としましょう。
すると、この三角形の内角の和は (x+180)°で、180°より大きくなってしまいましたね。
今あなたが描いたものはまぎれもなく三角形なのに、内角の和は180°ではありません。どうしてこんなことが起きるのでしょう？
うすうす気づいてきたかもしれませんが、この原因は「曲面上で三角形を描いたから」です。
この答えを聞いて、二種類の反応が返ってくるのを私は承知しています。
?えーそんなのインチキじゃん！
?へぇ、曲面の上では成り立たないんだ。
?の感想を抱いた方に対しても、何も文句は言えません。「三角形の内角の和は180°！そういうものなの！」と思っていても、受験においてはほぼ困ることはないですからね(^^;)
?の感想を抱いた方に、もう少しこのからくりを説明します。
今ほど紹介した通り、三角形の内角の和は、曲面上では180°ではありません。その理由は、曲面上では平行線に対して同位角や錯角が等しくならないからです。地球儀の上で平行線を引いてみれば、わかると思います。先ほどの証明過程を見てもらえればわかると思いますが、同位角や錯角が等しくないのですから、三角形の内角の和が180°であるというのは成り立ちません。
すなわち、「三角形の内角の和が180°である」というのは、実は平面上でのみ、成り立つ事柄であったのです。
普通、高校までの教育では平面上の三角形しか扱わないので、この「平面上で」という条件は忘れがちになります。しかしよく見てみれば、良問にはちゃんと「平面上で三角形ＡＢＣを考える」と、書いてあるはずです。これは解答者に「あなたが今まで学んできた平面幾何の事柄が使えますよ」と、保証してくれているメッセージでもあります。
何が言いたいかと言うと、一旦条件をはきちがえると、論理というのはとんでもないところまで行ってしまうということです。今回は、「平面上で」という条件を忘れたために、「描けないはずの」三角形が描けてしまったという状況に陥りました。
このような状況に陥らないために、数学を専攻する者は日々細心の注意を払っています。実際大学での「幾何学」という分野は真っ直ぐな空間を扱うことはほとんどないので、それを専攻している者にとっては三角形の内角の和が180°であることが平面上でしか成り立たないということは、ごくごく当たり前のことです。
高校生などは覚えきれないほどたくさんの定理やその定理を使うための条件などを習うと思いますが、新しい定理が出てきたら少し立ち止まって、なぜその定理が成り立つのか、条件が一つ抜けるとどのようなダメなパターンが生まれるのか、考えてみてください。
このクセをつけると、その分野全体の見通しが格段に良くなり、定理の帰結も当たり前のことのように思えてくると、私は思います。
よろしければワンクリックお願いします♪↓
曲面上での幾何学についてもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ☆
生徒に『三角形の内角の和は何で180°なんですか？』と訊かれたら、あなたはわかりやすく答えてあげられるでしょうか？
即座にわかりやすい解説ができるなら、あなたは少しだけ数学通です。
ちなみに答えは、こんな感じ↓
すごくわかりにくい図ですが許してください（笑）
左の三角形ＡＢＣにおいて、点Ａを通り辺ＢＣと平行な線を引きます。また、辺ＡＢを少しだけ伸ばしてあげます。すると平行線に対して同位角は等しいので赤い角の角度は同じです。また錯角は等しいので青い角の角度も同じです。今、角Ａと赤い角と青い角を足すと直線、つまり180°になりますから、すなわち角Ａと角Ｂと角Ｃの和は180°です。
これ、一度は必ず習うはずなんですが、そのうち「そんなものだ！」と思ってしまうため、きちんと証明できる人は決して多くありません。
ですから即座にこの証明を思いついて、質問に答えてあげられる人は、三角形のこの性質を真に理解していると言っていいでしょう。
ですが、今日の本題はこれからです。（すいませんｗ）
あなたが無事、生徒に三角形の内角の和が180°であることを証明してあげたとしましょう。次に生徒は、こんな質問をしてきました。
『ふーん。じゃあ内角の和が180°じゃない三角形ってないんですか？』
あなたは何て答えるでしょうか？
この質問に対して即座に、的確な答えを述べられる人は、かなりの数学通です。あらゆる物事の理由を探り、一つ一つ思慮深く考えている人と言っていいでしょう。
実はこの質問の答えは「ＮＯ」です！
内角の和が180°じゃない三角形は、実際に作ることができます。
では今から実際に、その三角形の作り方を紹介しましょう。
まず地球儀を用意します。
すぐ用意できない方は頭の中で結構ですｗ
北極点に立ってください。
そこから好きな方向に、経度線に沿ってまっすぐ進んでください。
で、ある程度進んだら、左に直角に曲がってください。
あ、一周する前に曲がってくださいｗ
そのまま緯度線に沿って、暫くまたまっすぐ進んでください。
で、ある程度進んだら、左に直角に曲がってください。
あ、一周する前に曲がってくださいｗ
経度線に沿ってまっすぐ進むと、北極点に戻ってくるはずです。
さて、ここであなたが描いたのは三角形ですね。
それでは三つの角の大きさを振り返りましょう。
まず最初に曲がった角は、９０°でした。
次に曲がった角も、９０°でした。
最後に北極点ですが、行きの道と帰りの道は同じではありませんから、ここでの角度はゼロではありません。仮に x°(x > 0)としましょう。
すると、この三角形の内角の和は (x+180)°で、180°より大きくなってしまいましたね。
今あなたが描いたものはまぎれもなく三角形なのに、内角の和は180°ではありません。どうしてこんなことが起きるのでしょう？
うすうす気づいてきたかもしれませんが、この原因は「曲面上で三角形を描いたから」です。
この答えを聞いて、二種類の反応が返ってくるのを私は承知しています。
?えーそんなのインチキじゃん！
?へぇ、曲面の上では成り立たないんだ。
?の感想を抱いた方に対しても、何も文句は言えません。「三角形の内角の和は180°！そういうものなの！」と思っていても、受験においてはほぼ困ることはないですからね(^^;)
?の感想を抱いた方に、もう少しこのからくりを説明します。
今ほど紹介した通り、三角形の内角の和は、曲面上では180°ではありません。その理由は、曲面上では平行線に対して同位角や錯角が等しくならないからです。地球儀の上で平行線を引いてみれば、わかると思います。先ほどの証明過程を見てもらえればわかると思いますが、同位角や錯角が等しくないのですから、三角形の内角の和が180°であるというのは成り立ちません。
すなわち、「三角形の内角の和が180°である」というのは、実は平面上でのみ、成り立つ事柄であったのです。
普通、高校までの教育では平面上の三角形しか扱わないので、この「平面上で」という条件は忘れがちになります。しかしよく見てみれば、良問にはちゃんと「平面上で三角形ＡＢＣを考える」と、書いてあるはずです。これは解答者に「あなたが今まで学んできた平面幾何の事柄が使えますよ」と、保証してくれているメッセージでもあります。
何が言いたいかと言うと、一旦条件をはきちがえると、論理というのはとんでもないところまで行ってしまうということです。今回は、「平面上で」という条件を忘れたために、「描けないはずの」三角形が描けてしまったという状況に陥りました。
このような状況に陥らないために、数学を専攻する者は日々細心の注意を払っています。実際大学での「幾何学」という分野は真っ直ぐな空間を扱うことはほとんどないので、それを専攻している者にとっては三角形の内角の和が180°であることが平面上でしか成り立たないということは、ごくごく当たり前のことです。
高校生などは覚えきれないほどたくさんの定理やその定理を使うための条件などを習うと思いますが、新しい定理が出てきたら少し立ち止まって、なぜその定理が成り立つのか、条件が一つ抜けるとどのようなダメなパターンが生まれるのか、考えてみてください。
このクセをつけると、その分野全体の見通しが格段に良くなり、定理の帰結も当たり前のことのように思えてくると、私は思います。
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曲面上での幾何学についてもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ☆
勉強になりました。