October 21, 2015
■今日のお題・・・・・・・・・・『野性の証明』（1978年 日本）
（原作：森村誠一 監督：佐藤純彌 出演：高倉健 薬師丸ひろ子 中野良子 夏八木勲 三國連太郎 舘ひろし 松方弘樹他）
1980年の日本。左翼ゲリラが米国大使の山荘を襲撃し、その処刑が迫ろうとしていた時、自衛隊の一等陸曹、味沢岳史（高倉健）他、特殊工作隊が救出作戦を成功させる。一方、自衛隊内に密かに結成された特殊工作隊は究極の使命を帯び、隊員への訓練も過酷を極め、今は隊員の誰もが恐れる東北山中への単独踏破訓練が決行中だった。しかし比類ないサバイバル技術を持つ特殊部隊員にとっても踏破訓練は困難であり、上官からの信頼も厚い味沢も例外ではなかった。極度の空腹と疲労の為、訓練中の味沢は偶然、山中で越智美佐子（中野良子）と出会うが、民間人との接触が禁止の訓練の中、彼女は味沢の目の前で殺されてしまう・・・・
本作は『犬神家の一族』（1976年）、ハリウッド・スター豪華出演の『人間の証明』（1977年）に続く、当時、邦画界の旋風児として恐れられた角川春樹率いる角川映画による劇場用第３弾であり、原作は「人間の証明」の森村誠一、監督は『新幹線大爆破』（1975年）で知られる佐藤純彌監督が務め、時代物や任侠物を多く担当された高田宏治の脚色で映画化されている。自衛隊特殊工作隊の過去を持つ味沢岳史一等陸曹に日本を代表する映画スター、高倉健、娘役の頼子にはオーディションで選ばれた薬師丸ひろ子が扮し、他にも中野良子、夏八木勲、三國連太郎、舘ひろし、松方弘樹、成田三樹夫等が出演された大ヒット・サスペンス・アクション巨編。
で、銃器ネタ・・・以前にも長々と書いたのだけど、やはり画像を付けてUPしたかったので、今回は追試と云う事でお許し頂きたい。それでどうしても気になっちゃうのは特殊工作隊他、味沢一等陸曹が使用していたAR18アサルトライフルの事なのだけど、当然、アメリカでロケされた時は本物のAR18ベースのプロップ、また日本でも同じ演習地のシーンが幾つか撮られ、そのシーンでは高級モデルガンの六研製AR18、そして無可動らしきAR18（電着も含む）の二種類が使われていたようだ。取り敢えず、今回、ハイビジョンで録画したのを発砲のシーンだけ（AR18）、コマ送りやらスローにして確認した限りでは、健さんが六研AR18を撃っていたのは2回くらいだったような（勿論、実プロップのシーンもある）。取り敢えず、他の方のと合わせて合計、3〜4回くらい六研製AR18が発砲していたように思えたよ。とは云え、老眼だし、体調が悪い時に横になりながら見ていたので、間違えている可能性の方が多いけどね（汗）。
上画像：武装革命を目指す、左翼ゲリラの一人が使用するM1カービン（スコープ付きのも登場しておりました）。
上画像：同じく他の武装左翼ゲリラが使用していたMP40短機関銃（バレルの根元が長く、M1と共に発砲は無し）。
上画像：自衛隊特殊工作隊を鍛える米軍将兵が使用したM60機関銃。邦画で実銃のM60が火を吐いたのは本作が初めてか。
上画像：そんなシーンは米カリフォルニアで撮られていた為、実銃のブローニングM2重機関銃も登場している。
上画像：また自衛隊兵士がカリフォルニアのキャンプ・ロバーツでM72A1使い捨てロケット・ランチャーを使用。
上画像：味沢一等陸曹の上官、皆川二等陸佐役の松方弘樹を囲む特殊工作隊員が持つAR18アサルトライフル（実）。
上画像：日本での撮影もある為、AR18（六研）のパーツを掻き集めたそうなんだが、この頃は未だ集めれば作れたのか・・・
上画像：このトロッコに乗っているシーンを撮影したのは米コロラド州なので、当然、使用するのは実銃のAR18。
上画像：こちらも米コロラドか。で、今回、チェックしながら見た感じでは意外と日本での発砲が多い（健さん)。
上画像：六研から発売されたAR18の殆どはオープン・ボルトだったそうだが、確かに画像のはオープン・ボルトだ。
上画像：また六研のボルト・ハンドルは真っ直ぐだそうだけど、画像のタイプはL字型の実銃と同じタイプになっている。
上画像：このシーン以外にも夜間の山の中で六研製AR18が発砲している。勿論、空薬莢も排出しておりました。
上画像：劇中で実プロップのAR18を発砲しても殆ど目を瞑らなかった健さん、でも六研製では目を瞑っている事が多い。
上画像：そんな六研製AR18はマズル・フラッシュも電着ではなく、火薬を沢山積めてBLK作動させた結果のような（貫通銃身？スゲェー！！）。今回の観賞で感じたのは案外、健さんが実銃のAR18を発砲しているのは米コロラド（トロッコのシーン）だけであり、それ以外の発砲は全部、日本国内での撮影で六研製AR18を使用したのだと云う事かな。あー、それから冒頭とラストで健さんが使用した1911ピストル、MGC製プラスティック・モデルガンのGM2と云うのは有名だよね（ちゃんとBLK作動しています）。
上下画像：冒頭で松方弘樹扮する皆川二等陸佐、GM2と大門団長仕様みたいなレミントンM31ポンプ・アクション式ショットガンを使用。そして後半には健さんと対決する為、ハンドガードが外されたM60機関銃を乱射。にしても空包とは云え、実銃のM60をフル・オートで発砲しても一切目を瞑らない松方アニキ、流石に“800人斬りの男”だ。上のと含め、リア・サイトが立てられていて素晴らしいぞ。
それでもう観る事はないし、もう書く事もないなぁ・・・と考えていたのだけれど、課長が観た事がないので一緒に観始めたら流石にハイビジョンの威力なのか、以前は判らなかったディティールがまた少し判明するようになって来た。なのでサラッと補修と云う事で追加してみたんだが、相変わらず、プーマのランニング・シューズやスウィング・トップ？バラクータのG9ジャケット他でキメる健さんはお洒落だわ、そして「爪の垢でも飲んでみたら・・・」と健さんが薬師丸ひろ子に云わしめた中野良子の美しさ、そして東映を退社したにも関わらず、取り敢えず、角川映画とは云え、東映作品と云っても可笑しくない作品スタイルが逆に興味深いわな・・・なので角川映画ながら東映で高倉健が主演して来た任侠物の現代版のようである事も間違いなく、その辺りは森村誠一の原作を健さん風に擦り合わせた高田宏治もご苦労が行った事だろうし、東映としては『新幹線大爆破』（1975年）の夢よもう一度、と云う部分も正直あったであろう。それから演出が何を観ても自分には今一つな佐藤純彌が東映オールキャストの『新幹線大爆破』、健さんと中野良子共演の『君よ憤怒の河を渉れ』（1976年）、『人間の証明』に本作とノリにノっていた頃だったりして、あのダイナミックなスケール感だけは如何なく発揮され、大作を大作っぽく撮る事が出来るのが、この人の最大の長所かも。うーん、時々腐しては来ましたが、当時の日本映画にはない魅力で邦画界を圧倒した角川映画、色々とどうかなと思う部分は今でさえ多々ありつつ、洋画至上主義だった自分を邦画に目を向かせてくれた事には感謝したいです。いやぁ、それにしてもラスト辺りの薬師丸ひろ子の魅力は反角川三人娘派の自分にも抗い難く（笑）、きっとクラスにいたならば好きになっていた事も違いなく、そして共演した俳優があの高倉健って事が彼女の人格形成にも強く影響を与えただろうねぇ・・・お薦め。