原子力規制委:原発7基に優先順位求める 関西電力拒否
毎日新聞 2015年10月27日 21時26分
原子力規制委員会は27日、関西電力の八木誠社長を招いて会合を開き、同社が再稼働を目指して安全審査を申請している3原発7基について、優先順位をつけるよう求めた。運転開始から38年が経過し、耐震安全性にも課題を抱える美浜原発3号機(福井県)の運転延長の取り扱いが焦点だったが、八木社長は「経営上すべてが重要」と順位付けを避け、議論は平行線をたどった。
関電は老朽原発の美浜3号機と高浜原発1、2号機の他、高浜原発3、4号機、大飯原発3、4号機(いずれも福井県)の審査を規制委に申請し、高浜3、4号機のみ審査に合格、使用前検査が進んでいる。原発の運転期間は法律で原則40年に制限されるが、一度だけ最長20年延長できる。高浜1、2号機と美浜3号機はそれぞれ来年7月と同11月までにすべての審査に合格しなければ廃炉になるが、美浜3号機は基準地震動の大幅引き上げにより耐震安全性の評価に時間がかかり、関電の資料提出が滞っているため、期限内に審査を終えられない可能性が高まっている。
規制委の田中俊一委員長は「(美浜3号機の審査が)期限切れでおしまいにならないためには、期限のないところにしわ寄せがくる」とし、このままでは比較的順調に審査が進む大飯原発3、4号機の審査が遅れる可能性を示唆した。しかし、2015年3月期に4期連続の最終赤字に陥った関電にとって、大飯3、4号機の再稼働は電気料金の大幅引き下げの鍵を握る重要課題。人員増強で資料提出を急ぐ体制を強調し「(美浜と大飯の)両方が重要な課題。効率の良い審査をお願いしたい」と繰り返した。
現在、規制委に安全審査を申請しているのは全国で15原発25基。うち関電の原発は7基あり、規制委は多くの人的資源を関電の審査に投入している状況だ。関電が優先順位をつけなかったことで、美浜3号機の期限切れによる廃炉と大飯3、4号機の再稼働遅れという両方のリスクを負うことになり、厳しい経営状況が続くことになる。【古屋敷尚子、鳥井真平】