99u：伝説的グラフィックデザイナーのMichael Bierut氏は、Pentagram社のパートナーであり、デザイン界の伝説であるマッシモ・ヴィネッリ氏の弟子でもあります。彼は、新しい著書である『How to』（物を売るためのグラフィックデザイン活用法）で独自の独創的なプロセスを世界に紹介しています。特に興味深いのは、彼がデザイン系メディア「Co.Design」で以下のように語っている、グラフィックデザインにおける「メソッド式俳優アプローチ」です。

誰かにNew York Timesのロゴデザインの仕事をやってみないかといわれたら、その仕事を適切に進めるために、編集者と打ち合わせをしたり、1ページ目のレイアウトをどのようにするかを決めるミーティングにも出席しなければなりません...。

買い物リストを渡すかのように、X、Y、そしてZが必要だとクライアントが言う中で、なにか提案するように要求されるかもしれません。それはズボンとシャツが欲しいと言われているようなものです。...買ってきたとして、それをどこで着るつもり？　予算はどれくらい？　私はあなたを鏡の前に立たせます。そうしたら、あなたはそれらの服を着るにふさわしい人物であると感じざるをえないでしょう。

ミーティングに出席して、私が活字の書体や色に関することしか考えていないのであれば、私は椅子に腰かけて、気をもみながら、「なぜ自分はここにいるのか？　退屈だ...」と考えていたことでしょう。

その代わりに、私が考えていたことはこうです。「自分がここにいることが信じられない。私はジャーナリズムの授業を受けたこともないのに、New York Timesのトップ編集者たちと同席し、一足先に明日の新聞紙面左側のコラムに載る内容を知ることができるなんて」私はつかの間のスリルを味わっていたのです。

仕事を任されるためには、自分の仕事の主題にどっぷりと浸かることです。それは、ただ単にもっと効果的で影響力の強い仕事につながるだけではありません。それによって、あなたはアーティストとしてさらに充実感を味わい、意欲を持続させることにもなるのです。演技に対するメソッド式俳優アプローチは、ただプロジェクトが完了するまで本当の自分の姿を見せないように、その役になりきって生きるというだけではありません。究極的には、このアプローチとは、何かを身につけたり、演じることではなく、ただそこに存在するということなのです。そして、もし関心や興味のあるふりではなく、心から「それを感じている」ときに自分の仕事でその境地に到達できるとしたら、そこに芸術的価値が存在するのです。

The Method Actor Approach to Design | 99u

Allison Stadd（訳：コニャック）
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