中国は昨年8月、南シナ海にある南沙諸島(スプラトリー諸島)のファイアリー・クロス礁(中国名:永暑礁)に人工島を造り始めた。フィリピン、ベトナムなど周辺諸国と米国は「国際規範に反する現状変更行為」だと反発したが、中国は工事を強行した。およそ1年後、ここには長さ3キロを超える大きな島が生まれた。滑走路や港、早期警戒レーダー、対空砲、通信施設に温室・農場まで備えていた。米国に対抗する、中国の海洋軍事拠点が生まれたわけだ。
これにより、最近米中の仲は険悪になった。単に人工島一つの領有権をめぐる問題ではないからだ。中国の人工島建設は、米国に対する「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略に伴うものだ。中国は、米空母などが中国周辺海域に接近することを阻止するため、沖縄や南沙諸島などを結ぶ「島鏈(れん)」という仮想の防衛ラインを引いた。南シナ海・東シナ海一帯を中国の「内海」化し、その向こうにまで制海権を拡張しようとする戦略だ。米国が中国の大洋進出を防ぐために張り巡らした包囲線とほぼ重なる。
中国は今年9月3日の戦勝節軍事パレードで、新型の中距離弾道ミサイルをPRした。「東風21D」は射程2000キロ前後の地対艦ミサイルで、大気圏外まで飛んでいって再突入し、動く目標に当てることができる。迎撃が困難なため「空母キラー」と呼ばれる。「東風26D」は移動式発射台から撃つことができ、グアムまで射程に収めている。米海軍の強大な戦力をけん制するための新兵器だ。
米国は、近々人工島海域に軍艦を派遣するという意向を南シナ海周辺諸国に伝えた。現役最強の空母「ロナルド・レーガン」を支援するため、今月19日にはイージス艦「ベンフォールド」なども日本に追加配備された。