日本から米国への留学生が減り続けている。ほかの留学先の国々と比べても米国の落ち込み度は際立ち、今年発表になった2012年の統計では、ついに中国に抜かれて首位の座を失った。調べてみると、アジア諸国の台頭に向き合う日本の姿が浮かび上がる。

 東京都内で9月12日、米国留学を考えている若者向けに、大学のスタッフが相談を受ける「アメリカ留学EXPO 2015」が開かれた。来場したケネディ駐日大使は「米国への留学は皆さんの21世紀のグローバル市民としての可能性を引き出します」と学生や保護者に語りかけた。日米は2020年までに両国の留学生数を倍増させる目標を掲げている。

 文部科学省がまとめた資料によると、日本人の海外留学者数は04年(8万2945人)をピークに11年(5万7501人)まで下がり続けている。留学先の内訳では、04年には米国が約4万2千人で全体の半数を占めていたが、11年には半減し、全体に占める割合も約35%に落ち込んでいる。

 最新データとなる12年の留学者の総数は6万138人と久々に盛り返したが、米国留学の減少に歯止めはかからない。対照的に09年から増え続けているのが中国だ。12年にはついに、同省が国別の留学者数を把握する00年以降で初めて、米中が逆転した。

 文科省の担当者は「一昔前は留学イコール米国というところがあったが、今は若者の選択肢が多様化しているのが大きい」と分析する。中国については、日本の大学との交流協定数が急速に増え、学生が留学先に選びやすくなったことも背景にあるとみている。さらに、最近は企業が採用したい人材も欧米での留学経験者からアジアへ変わってきているという。

 留学生減少の一因には、日本の若者の内向き志向があるとされる。しかし、社会学を学ぶために英語圏への留学を検討中の大学1年生、石川輝さん(18)は「異文化や国際的な環境に関心のある学生が減っているとは思えない」と首をかしげる。ただ、周囲で増えているのは、中国語やスペイン語が使われている国々への留学だという。

 経済的な問題も米国留学に二の足を踏ませる大きな要因だ。同省の資料によると、11年時点での米国の私立大学の年間平均授業料は235万円、州立大学で171万円で、さらに増額傾向にある。日本の私立、国立大学のほぼ倍で、円安ドル高が追い打ちをかける。