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定時後の「帰りにくい空気」とどう向き合うか

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【サイボウズ式編集部より】「ブロガーズ・コラム」は、サイボウズの外部から招いた著名ブロガーによるチームワークコラムです。今回は日野瑛太郎さんによる「定時後の“帰りにくい空気”との向き合い方」について。

2015年10月12日の朝日新聞朝刊に、「残業漬け 私はごめんだ」という見出しの特集記事が載りました。実はこの記事に、長時間残業を否定する立場のコメントとして僕のコメントが載っています。掲載されるという連絡は事前に記者の方からいただいていたのですが、いざ載ってみると一面の目立つところに掲載されており、想像していたよりも多くの反響がありました。

たとえば、この記事がきっかけになり、はてなブログでは「実録・残業列伝」というトピックが立てられ、さまざまな人が自身の残業の実体験をつづるエントリが投稿されています。中には月300時間なんていうおそろしい体験記事もありました。単純計算すると1日約14時間(土日なし)で働いていることになりますが……。

これだけ多くの人が「残業」というテーマに反応するということは、それだけ日本の会社では長時間残業が常態化しており、不満に感じている人がとても多いということだと思います。ほとんどすべての人が「残業は嫌だ」と思っているはずなのに、残業はなかなかなくなりません。会社によってはもはや残業状態がデフォルトになり、定時に帰る人なんて1人もいないというところすらあるぐらいです。

長時間残業が働く人個人の心や身体に悪影響を及ぼすことは言うまでもありませんが、残業が悪影響を及ぼす範囲はそれだけにとどまりません。長時間残業は個人を超えて、チーム全体にも悪影響を及ぼします。

残業が常態化しているチーム内の雰囲気は悪くなり、生産性も著しく低下します。あまりにもその状態が長く続くと心や体を壊して離脱する人が出始め、そのことがさらにチームの状態を悪化させます。チームにとって長時間労働は明らかに悪です。

では、どうすればチームは長時間の残業を回避することができるのでしょうか。今回は、この問題について考えてみたいと思います。

業務効率化だけで残業はなくならない

僕はつねづね、残業が発生する理由は2種類存在すると考えています。1つは純粋に業務量が多すぎることで発生する残業、もう1つは職場の「帰りにくい空気」が原因で発生する残業です。

残業の話が出るとよく「業務を効率化して早く帰れるようにしよう」という意見が出ますが、この案は前者の問題しか解決しません。「帰りにくい空気」が蔓延する職場では、どんなに業務効率化をして仕事の生産性を上げたとしても、誰も定時後に帰ろうとしなければ、やはり帰りにくい空気は残るので結局はつきあい残業せざるをえなくなります。

また、たとえ業務を効率化して単位時間当たりにこなせる仕事量が増えたとしても、それで空いた時間にまた違う仕事を新しく振られるとしたら、結局は同じように残業しなければなりません。業務効率化だけでは、残業問題の解決策として不十分です。

それよりも大事なことは、「定時が来たらよほどのことがない限り帰る」「プライベートの時間まで仕事をするなんてありえない」という価値観をチーム内に浸透させることです。

残念ながら、多くの日本の会社はこれとは真逆の価値観の下で動いているのではないでしょうか。「定時が過ぎてもみんなが頑張っているなら自分だけ帰ってはいけない」「よほどのことがなければ仕事はプライベートよりも優先される」――こういう価値観が蔓延する会社では、どんなにハイパフォーマンスで働いたとしても、気持ちよく「定時帰宅」するわけにはいきません。

「頑張って効率よく働いてもどうせ定時には帰れない」のであれば、当然ながら生産性を上げる努力もされなくなっていきます。「日本人は世界の中でもかなり長時間働いている人たちなのに生産性は著しく低い」と言われることがありますが、そうなってしまう原因はこの点にあります。「生産性の低い長時間労働」は言わば人生のリソースの無駄づかいです。そうならないためにも、まずは職場の空気の問題を再優先で解消しなければなりません。

チームメンバーと、じっくり残業について話し合おう

職場の「帰りにくい空気」を払拭するために僕がおすすめしたいのは、チームメンバー全員で一度じっくりと残業について話し合うことです。「帰りにくい空気」は、結局のところルールが明文化されていないことから発生します。

たとえば「定時は18時で、その時間になったらよほどのことがない限り帰ってよい。ほかの人が残っているかどうかは関係ない。その帰宅をとがめることは許されない」というルールがチーム内で明示的に合意されていれば、残業について空気を読んで判断する余地がなくなるので、気兼ねなく「定時帰宅」ができるはずです。そのような「残業についてのルール」をチームで決めてしまうわけです。

ルールを決める際には、たとえば以下のケースについてどうするのが望ましいか、行動方針を話し合うとよいでしょう。

1. 定時は何時なのか
2. 定時後に残業しなければならないのはどのようなケースか
3. 定時後に他人の仕事を手伝うべきか否か
4. 定時後に会議等を入れる可否
5. 定時後に仕事を依頼する可否

これらについて話し合う過程で、「暗黙のルール」は「明示的なルール」に変更されます。なお、意見が割れてしまった場合は、なるべく残業について消極的なものに決定するようにします。たとえば「3. 定時後に他人の仕事を手伝うべきか否か」という問題について、1人でも「手伝わなくてよい」と考えている人がいるなら、チームのルールは「手伝わなくてよい」にするべきです。

話し合いの結果、残念なことにあなた以外のチームメンバー全員が「つきあい残業」に賛成する立場だったとしたら、残念ですが中長期的にはチームを離れる判断が必要になるかもしれません。

もっとも、建前ではなく本音で話し合えば、多くの人は「つきあい残業」なんてやめたい、定時になったら気兼ねせず帰りたいと考えているはずです。「自分だけ先に帰るとよく思われないだろうなぁ」と勝手に推測する前に、実際に本当にそうすべきだとみんなが思っているのかどうか、話し合って確かめてみる価値は十分あります。

アウトプットを増やしたいなら、残業する前にやれることはたくさんある

1日8時間、週40時間という労働時間は、実は非常に長い時間です。残業をするというのは、つまりこの週40時間だけでは足りないという意味なのですが、果たして本当にそんなことはあるのでしょうか。

目の前の仕事が終わらない、チームの目標が達成できないという場合には、残業という手段を導入する前にまだまだやれることはたくさんあるはずです。ヘタに残業を導入するよりも、仕事の優先度を組み立てなおしたり、不要な会議を減らしたりするほうが、効果的なアウトプットを増やすという意味では何倍も意味があります。残業はあくまで最後の手段であり、安易に頼るべきではありません。

日本には毎日のように残業をしているチームがたくさんあると思いますが、このことを普通だと思ってはいけません。チーム内で残業が恒常的に発生しているということは、仕事の進め方やチーム内の人員配置などのどこかに問題があるということです。残業はチームがうまくいっていないことを知らせるアラートだともいえるかもしれません。アラートが来たらそれを放置せずに、優先的に対処するようなチームでありたいものです。

イラスト:マツナガエイコ

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