河野-亀田戦は「イソップ寓話」と前回書いた。年齢差はあるが、同じ頃にボクシングを始め、亀田は順調に王者のウサギで、河野は挫折をへて王者のカメ。現実の結末は寓話と同じ。カメがウサギに勝ったが、異例の海外で日本人対決としては物足りなかった。というよりも内容的には…だった。
欧米はジャブからコンビネーションに打たれないことが評価される。「珍しい」打ち合いを評価の声もあったそうだが「日本人も結構やるじゃん」という感じだったようだ。
河野はKOが増え、今回もダウンを奪ったが、この2人はボクシングの神髄と言えるパンチ力がもう一つない。それを知る者には、内山や山中のような期待感は持てなかった。昭和のガチャガチャファイトに近かった。
再三のローブロー、バッティングをアピールしたり、注意を無視したりしたのはいただけない。ついに主審に「シャラップ!」と叱られ「次やったら失格」とまで言われた。主審もちょっと過敏だったが世界戦では異例。しかもテレビ中継で減点理由の説明がほとんどなかった。
日本人が海外リングに上がる機会が増えている。トップボクサーには欧米は目標にもなっている。日本人の実力をアピールへ絶好のチャンスだったが、逆にみっともない光景に見えた。
河野が自分のスタイルに徹した。試合決定から見下され、結婚もしたばかり。勝ちにこだわったのは理解はできる。何より、これをいい経験にできるチャンスがまだ残ったのだから。
亀田は「やりきった」と言ったが、そうは見えなかった。もともとセンスを感じなかったが、努力したのは確か。内藤戦が全盛で、あとは絶妙なマッチメークあってのもの。何しろ、河野戦は日本人と2試合目で、初めて喫した黒星だった。
電撃引退とも報じられたが遅かったと思う。世間の注目度は高かったが、興味本位と言ったところだろう。視聴率は関東地区で7・4%。半日前の録画を考えれば上出来だが、一家で騒動の連続はボクシング界にはマイナス要因が大きかった。
今後は「自由人」になるそうだ。弟の大毅も引退濃厚、和毅はメキシコ拠点。あの豪華なジムはどうするの? 会長になりたくてもなれない事情もある。JBCと係争中で、感情のもつれもあって簡単に解決できそうもない。長男というより今や一家の長。もう少し早く引退して頭を下げていれば、大分違ったのに。【河合香】