■熱安定性が違う!
ポリアセタール樹脂は、結晶化度が高く強靭で摺動性や耐薬品性に優れていますが、非常に高温の状態や酸性成分の存在する環境などでは、分解・劣化を起こします。しかも、この分解反応は一度始まると連続して次々に分解していきます。(チャックを開くようなので、ジッパー的と言うこともあります)
-●-●-●-●-●-●-●-●-●
→ -●-●-●-●-●-●-● ● (分解)
→ -●-●-●-●-●-● ● ● (すぐ隣も分解)
→ -●-●-●-●-● ● ● ● (更に次々と分解)
→ -● ● ● ● ● ● ● ●
このまま分解が最後まで進んでしまうと、ポリアセタールは元のホルムアルデヒドに戻ってしまいます。ところが、ここに共重合成分があったとすると、
-●-●-●-●-○-●-● ● (分解)
→ -●-●-●-●-○-● ● ● (隣も分解)
→ -●-●-●-●-○ ● ● ● (共重合成分でSTOP!)
共重合成分の化学結合は、オキシメチレン基同士の結合とは性質が異なりますので、分解がここで食い止められます。
ジュラコンはコポリマーとすることで、ホモポリマーに対して熱安定性を向上させているわけです。
ジュラコンの各種グレードは、樹脂に添加剤(安定剤)を配合することで分解が起こりにくくしたり、分解反応を抑制したりすることで、更に安定性を向上させる工夫をしています。
■物理化学的性質も若干違う
ホモポリマーに共重合成分が挿入されたことによって、熱安定性以外に様々な性質が変化しています。
一般的に、共重合成分は、炭素がひとつ多いオキシエチレン基( -CH2CH2O- )です。共重合成分の導入比率によっても違ってきますが、コポリマーは、ポリアセタールホモポリマーに、オキシエチレンポリマーの性質が加味されたものと言えます。
ポリアセタールコポリマーとホモポリマーの標準グレードの物性を比べた表をご覧下さい。
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ホモポリマー
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コポリマー
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比重 |
1.42
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1.41
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融点 |
178℃
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167℃
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短期機械的特性 |
引張強さ
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690kgf/cm2
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610kgf/cm2
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引張延び
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40%
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60%
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HDT(荷重;18.5kgf/cm2)
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124℃
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110℃
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UL温度インデックス |
非衝撃
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90℃
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100℃
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衝撃
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85℃
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95℃
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電気
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105℃
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110℃
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燃焼性
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94HB
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94HB
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短期的な機械特性は、ホモポリマーの方がコポリマーを上回る傾向が見られますが、長期的にはコポリマーの方がホモポリマーよりも特性低下の割合が小さいので、例えばクリープ破壊寿命などでは、ある時点を過ぎると強度の逆転現象が生じることが知られています。

各種ポリアセタールのクリープ破壊寿命(60℃ 空気中) |
ただし、これらの結果をもってホモポリマーとコポリマーとどちらが優れていると結論できるわけではなく、実際には長短期の各種物性や熱的安定性なども含めて、ご使用の環境に対して総合的にどちらが適しているかを判断して樹脂やグレードを選択することになります。
それでは、熱安定性とクリープ特性に優れたコポリマー、短期的機械特性に優位性のあるホモポリマー、それぞれの長所を併せ持つようなグレードは無いのでしょうか?
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