文/ポール・クルーグマン
「未来」が最初に起こる国
カナダは、面白みのない国だと言われている。1980年代にニューリパブリック誌が、世界で最もつまらない新聞見出しは、「注目すべきカナダの先取り精神」だとしたのは有名な話だ。
しかし経済政策に関する限り、そういう評判は不当だ。なぜなら、カナダは驚くほどしばしば、「未来」が最初に起こる国だからだ。
そして今、またそれが起ころうとしている。月曜日(10月19日)にカナダの選挙民たちは、圧倒的な形で与党の保守派を権力の座から駆逐し、中道左派の自由党が驚異的勝利をおさめた。
自由党が選挙時に公表した政策には興味深い点が多く見られるが、中で最も際立つのは、西欧諸国全体で支配的な政治的言論となってきた、赤字の強迫観念にとりつかれた経済緊縮の通説を真っ向から否定している点だ。
自由党は、あくまで率直かつオープンにケインズ派の見解を支持し、大きな勝利をおさめたのだ。
それが意味するところを説明する前に、まず、カナダがひそかに、しかし長い間、特に通貨政策に関して非正統的な経済理論を支持してきたことについて話をしよう。
巨大なアメリカの隣で、自律的に生きる
1950年代には、どの国もが、どんな代償を払ってでも自国の通貨を米ドルに連動させることが必須だと考えた。そうした中で、カナダはたった一つの例外だった。彼らはカナダドルを変動させ、実際、流動的な為替レートはかなりうまく機能することが判明した。
後に、共通通貨の導入を拒否した国は大きなデメリットを被ることになるという予測のもと、ヨーロッパ諸国は先を争ってユーロに参入した。その時カナダは、巨大な隣国と緊密な経済関係があっても、自国通貨を維持することが可能であることを示したのだ。
そうそう、カナダは他の国ほど銀行の規制廃止というイデオロギーに夢中にならなかったことも挙げられる。その結果、カナダは2008年の金融危機で最悪の事態になることを免れたのだ。
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