パクリ本は回収することになったと、発売元から連絡をいただきました。
まだ一部、残っているかもしれませんが、各店舗には正式に回収の知らせが入っています。
回収の知らせを受け、ブログの一部を閲覧できないようにいたしました。
ご心配くださった方々のためにも、今回の経緯を記します。
・パクリ本が出ると、担当から発売日前日に事後報告。
・回収を求めるが、発売期間が2週間と短いため不可と言われる。ネットのみ一部停止。
・販売元のコンビニの広報に事実を伝え、回収を求める
・販売元から事実確認した上で担当から連絡させると約束。→連絡は来てません。
・出版社の販売部より回収の知らせがあり『穏便に済ませて欲しい』と言われる。→穏便って言いかたはないとムッとする。
・正式な謝罪については来月半ば。→著者から日程指定。
以上が今回の大まかな流れです。
昨日はリツィートの知らせが数秒ごとに入り、またご心配メール、電話が鳴り止みませんでした。
ご心配いただいた皆様には、改めて御礼申し上げます。
今回のパクリ本騒動は、ただ、ただ残念としかいいようがありません。
長年お付き合いしてきた出版社で、私の担当者はみなさん仕事熱心で、様々なお仕事を一緒にやらせていただきました。
同社で起きたこととは言え、その方々にご迷惑おかけしたことが、何より申し訳なく思います。
こうした問題は初動が何より大切だと、私自身痛感いたしました。
勇気ある蔵元から連絡をいただいたのですが、パクリ本が出る一か月前に、拙著『うまい日本酒の選び方』を再編集したムックが出ると電話があったそうです。
著者である私には発売日前日。
何故、連絡をくださらなかったのか不思議で仕方ありません。
ただもし連絡を頂いても、3月に書籍として刊行したばかりなので、私はムックの刊行自体を阻止したと思います。
何故ならこの本は拙著『日本酒ティスティングブック』の3冊目であり、言わば集大成のようなものだからです。
そんな大切な我が子同然の作品を、廉価本として再編集されてしまうのは、あまりに著者、蔵元に対する敬意がないと考えるからです。
そうしたことを常々話していたからか、今回のパクリ本の際の連絡は無く、別のライターを起用し、ほぼ構成は同じ、語尾、デザインを変えただけの本が刊行されました。
構成だけならまだしも、私が常々話している酒と料理の味の濃度を合わせるという、ペアリングのルールまで掲載されていました。
長年、日本酒を書き続けていないと理解できない内容を、あたかも取材しなおしたかのように再編集され、私の名前はどこにも掲載されない。
あまりに敬意がなく、ひどい仕打ちです。
回収を求めたのは、著作権侵害にあたること、長年蓄積してきた知識、経験に対する敬意のかけらも無いからです。
回収できない理由も疑問でした。
大手コンビニであれば、そんな著作権を侵害した作品を廉価で販売することはないからです。
もし毒物が混入したお菓子があったら、即回収となりますよね。本だって同じ、回収できないなんて、ありえません。
最初に回収を求めた時に動いてくだされば、ブログに書いたり、つぶやいたりせず、ここまで大きな騒ぎにならなかったはずです。
何よりも作品に対する敬意がなさすぎました。
私は今回の一件で慰謝料が欲しいとか、名前を売りたいなどは全く考えていません。
回収と正式な謝罪を求めただけです。
今は7月に立ち上げたばかりの社団法人の経営に忙しく、また今週末から来月にかけ、たくさんのイベント、講演も控えた最も大切な時期です。
そんな時期にこんなネガティヴなことで、頭を悩ませたくありません。
今回のパクリ本騒動は、まさに晴天の霹靂でした。
どうかみなさん、作品や知識、そして積み上げてきた経験に対する敬意を持ってください。
知識、経験は時間とお金をかけ、構築してきた財産なのです。
この騒動により、たくさんの方々がフリーランスの知識、経験に対する敬意を持ってくださればと願い、パクリ本騒動はひとまず幕引きとさせていただきます。
ご心配、ご迷惑をおかけした皆様にはお詫びとともに、心より御礼申し上げます。
エッセイスト・酒ジャーナリスト
葉石かおり