2013年からスマートフォンでフリマアプリの競争が激化する中、2013年8月にメルカリはユナイテッドからシリーズAで3億円の資金調達を実施した。その事業計画書のポイントについて、代表取締役の山田進太郎氏に話を聞いた。
Text by 梅木雄平(The Startup代表取締役)
メルカリ代表取締役の山田進太郎氏はウノウというソーシャルゲーム会社を米国のソーシャルゲーム会社であるZyngaに売却した経験を持つシリアルアントレプレナーだ。
山田進太郎 メルカリ代表取締役
2013年2月にメルカリの前身となるコウゾウを設立し、スマートフォンのフリマアプリ「メルカリ」を2013年7月にリリースした。メルカリのリリース直後である同月にはEast Venturesから5,000万円の資金調達を発表している。翌月にユナイテッドから3億円の調達を発表している。
「East Venturesから資金調達したばかりということもあり、次の資金調達は少し先かなと思っていました。ユナイテッドは海外ユーザー比率が高いスマホ着せ替えアプリのCocoPPaを運営しており、CocoPPaとメルカリの主なユーザー層が10代から20代の女性であるという点から提携すればシナジーがあると考えていました。
グローバル展開を目指したい我々としては、CocoPPaのグローバルの知見も欲しかった。最初は事業提携のつもりでユナイテッドを訪れたのです」。
資金調達のつもりでユナイテッドに話に行ったわけではなかったが、ユナイテッドからはウノウにも出資を受けていた実績や、CocoPPaの事業展開を検討していたユナイテッドの思惑と合致し投資に繋がった。事業会社からの投資に関して山田氏はこう語る。
「実はウノウ時代も純粋なベンチャーキャピタルはあまり株主として入っていませんでした。サイバーエージェント、オプト、ユナイテッド(当時ネットエイジ)、トランスコスモス、GMOアドパートナーズという事業会社に加え、今回も出資いただいているEast Venturesの松山太河さんの当時のファンドに初期に出資いただいています。
過去の経験上、事業会社の方が投資の意思決定が早い場合が多く、事業会社の経営陣との人間関係もあるので、EXITの際の意思決定がしやすいです。前回はウノウをZyngaに売却しましたが、利益がかなり出てきた段階で、この金額よりもっと高く売れるはずだとより多くのキャピタルゲインを重視するよりも、私がやりたいようにしてよいという経営者判断できる株主が多かったことがスムーズな売却に繋がりました」。
今回は売却でのEXITは考えていないとのことだが、EXITまで見据えた株主選びの一つの参考になるだろう。
事業計画書は至ってシンプルで、表紙を入れても9枚しかない。サービスリリース直後の資金調達だったため、実績数値は記載できなかったという。しかし、このシンプルなコンセプトには説得力がある。
「世界的には資源が限られていたり、国内では消費税増税の流れもあり、個人間取引(C2C)の需要は高まっていくという市場環境があります。スマートフォンの普及とともに、パソコンを使いこなすITリテラシーが高い層だけではなく、パソコンを持っていないような人でも個人間取引が簡単にできるサービスの必要性を感じました」。
現にメルカリのメインユーザーは20代の地方在住の主婦。いわゆるヤンママ層だ。地方在住の主婦が細切れの時間でメルカリに出品したり、閲覧して購入したりしている。出品数は現時点で1日1万件を超え、累計出品数は100万件。コンビニで発送や支払ができることからも、地方の主婦がコンビニに行くついでにメルカリで売れたモノを発送したり、買ったモノの支払をするという生活に根付いた使われ方をし出しているという。
「C2Cはパソコンでは国内ではヤフオク、海外ではeBayが主流で、ヤフオクは月間500億円、eBayは月間6,000億円の流通額があります。非常に大きい市場で、そこにスマホに最適化した簡単で安全に使えるサービスがあると良いと考えました」。
非常にシンプルな話だが、論理が通っており、必要性が高まるサービスであることは自明だ。山田進太郎氏を中心とした経験豊富な経営陣が、このシンプルなコンセプトを実現できる可能性が高いと感じさせたことが、資金調達に繋がったのであろう。
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