スペイン:カタルーニャ独立派勝利…中央政府と対立激化へ
毎日新聞 2015年09月28日 21時31分(最終更新 09月29日 01時32分)
【バルセロナ(スペイン東部カタルーニャ自治州)宮川裕章】スペインのカタルーニャ自治州で27日、州議会選挙(定数135)が投開票され、中央政府からの独立を主張するマス知事率いる保守系与党を中心とした独立賛成派が過半数を押さえ、勝利した。独立賛成派は、過半数獲得の場合、18カ月以内の独立を公約しており、独立を憲法違反として認めない中央政府との対立が激化しそうだ。カタルーニャの勝利は、かえってスペイン全土で反発を呼ぶ可能性もある。
県都バルセロナ市から約15キロの郊外トゥレーヤス・デ・ヨブレガット市では、独立賛成派の得票率が61%に達した。地元生まれの鋳造工、エスピノサ・マヌエルさん(48)は「ここの住民はカタルーニャ語を話し、カタルーニャを愛している。他地域からの住民が少なく、結束が強く、伝統がよく残っている」と話した。
マス知事は独立賛成派の過半数獲得を祝う集会で、「民主主義の勝利だ」と気勢を上げた。しかし、選挙前に公約した、独立へのプロセスには触れず、中央政府の反応を見極める模様だ。
スペインのラホイ首相は28日午後、選挙結果を受け、マドリードで記者会見し、「スペイン全体の良い方向を考え、前に進みたい。カタルーニャの言い分を聞く用意はあるが、憲法の範囲内であることが条件だ」と述べ、憲法違反とみなす独立への要求には応じない意思を改めて示した。また「一部の地域を法律の範囲を超えて優遇することもない」と語り、カタルーニャ州が求める、国からの徴税権の移譲や、国からのサービス給付に応じた国への納税は認めない考えを示唆した。
バルセロナ大のジョルディ・ムニョス研究員は「中央政府与党の国民党は、全国での支持率アップを目指している。カタルーニャの独立運動を、金持ちのわがままのような印象で宣伝すれば、他州の共感が得られやすい事情がある」と説明する。地中海に面した商業都市を抱えるカタルーニャはスペイン全体に比べ、平均所得が高い。
さらに、独立賛成派も、左右政党などが同居し、欧州連合(EU)への距離も異なり、一枚岩ではない。人口流入の多い都市部では独立への支持は3人に1人にとどまる。
独立賛成派政党の得票率は、同州4県のうち、外部からの移住者が最も多いバルセロナ県で36.1%と最も低く、地域に長く暮らす人口が多い他の3県では56.0〜41.6%と傾向が分かれた。
ムニョス研究員は「(12月にスペイン全土で実施される)総選挙を前に、独立賛成派内の協議、結束や反対派の取り込みに時間がかかり、当面は独立の具体的準備には踏み込みにくいだろう」と予想する。
一方の中央政府についても、「警察による妨害はあり得るが、イメージダウンにつながる軍の介入はないだろう」と予測した。