韓国保健福祉部(省に相当)は25日、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスに感染した66歳の男性が同日死亡したと発表した。死者が出たのは107日ぶりで、計37人となった。
男性は感染の経緯が特異で、周囲を一層悲しませている。男性は5月27日、病院へ行くといって一人で出かけた妻のことがどうしても気にかかり、妻を追って多くのMERS患者が発生したサムスンソウル病院を訪れ、妻の診察費を支払った。この日は多数に感染を広げた14人目のMERS患者が同病院の救急室に「放置」されていた日だ。
男性は妻を探してちょっと救急室に立ち寄り、会計窓口で診察費を精算したにすぎず、病院への滞在時間が短かったため自宅隔離対象にもならなかった。せきが出てもMERSの可能性を疑っていなかったが、19日後の6月15日にMERSと診断され、ソウル大病院に入院した。
入院から1カ月でMERSウイルスが消失し、陰性となったが、その後も合併症のため容体は次第に悪化。重度の肺炎による呼吸困難で、7月16日からは人工肺(ECMO)治療を受けていた。肺の回復は困難だと診断され、8月28日には韓国のMERS患者で初となる肺移植手術を受けた。だが、手術から1週間ほどで容体が急激に悪化し、意識を失った。病院がその原因と治療法を探せないまま、男性は25日午前1時52分に息を引き取った。
MERSと診断された患者186人のうち、4人は現在も治療を受けている。