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南沙:米軍艦が「中国領海」航行…人工島の12カイリ内

毎日新聞 2015年10月27日 11時49分(最終更新 10月27日 13時03分)

中国が実効支配する岩礁
中国が実効支配する岩礁
南シナ海・南沙諸島のミスチーフ礁=ロイター
南シナ海・南沙諸島のミスチーフ礁=ロイター

 【ワシントン和田浩明】米海軍は26日夜(日本時間27日午前)、南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島で中国が「領海」と主張する人工島の12カイリ(約22キロ)以内にイージス駆逐艦を派遣する「航行の自由」作戦を実施した。ロイター通信など欧米メディアが報じた。世界有数の海上通商路である南シナ海への影響力拡大を図る中国を米国が「国際秩序の維持」を名目に押し返しを図った形だ。ただ、中国メディアは、現場で中国軍の軍艦が追尾していると報じており、情勢の緊迫化が懸念される。米防衛当局者はロイター通信に「今回だけでなく定期的に実施される」と説明。米国として継続的に南シナ海での海軍プレゼンスを示していく意向を強調した。

 AP通信は米防衛当局者の話として、イージス駆逐艦は、中国が岩礁を埋め立てて造成しているスービ(中国名・渚碧)礁から12カイリ以内を航行した。派遣されたのは横須賀の米海軍基地に配備されていた「ラッセン」で、トマホーク巡航ミサイルや魚雷、イージス防衛システムを装備する。全長155メートル、総排水量9145トンで、300人以上が乗艦する。同艦ホームページによると、今月マレーシアのコタキナバルを出航し、すでに南シナ海を航行中だった。

 ラッセンには、哨戒機P8かP3も同行したと見られている。米海軍のP8は5月にも南沙諸島上空を飛行し、中国側から「軍事警戒領域に侵入したので立ち去れ」と警告されていた。

 航行の自由作戦に関し、アーネスト米大統領報道官は26日の定例会見で内容の確認は避けた。一方で、南シナ海では毎年数十億ドルの通商が行われていると指摘。「自由な通商と船舶の自由を保護することは、世界経済にとって極めて重要な原則だ」と述べ、米主導の国際秩序をアジア太平洋地域でも維持することが目的であることを示唆した。

 オバマ米大統領は9月末、中国の習近平国家主席とホワイトハウスで会談。その際、南沙諸島での埋め立てや軍事施設の建設を中止し、周辺国と平和的に領有権問題を解決するよう呼びかけていた。しかし、習主席は「南シナ海は固有の領土」との立場を固持。オバマ氏は「国際法上許される世界のどこでも航行、飛行する」と明言していた。

 ◇領海◇

 国連海洋法条約では、各国が海岸から12カイリ(約22キロ)までを領海と定めることができる。だが、スービ礁やミスチーフ礁は、中国が埋め立て工事をする前は満潮時に水没する「低潮高地(暗礁)」で、国際法上は領海の主張ができない。このため、艦艇が進入しても特定国の領有権には影響を与えず「すべての国のために航行の自由を守る」との主張を示しやすいという判断が米側にあるとみられる。そもそも中国は、南シナ海のほぼ全域を9本の破線で囲った「九段線」を設定。「中国が最も早くに南シナ海を発見し、継続して管轄してきた」として「九段線」で囲われたエリアに「議論の余地のない主権を有している」と、主張している。ただ、米側はこうした「九段線」に基づく中国の主張は、国連海洋法条約に合致しないとしている。

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