優れた人材の確保や生産性の向上など、今や「ワークスタイル変革」は多くの企業が取り組むべき重要な課題となっている。しかし、いざ改革を起こそうとしても、現場への浸透や経営陣の説得など、乗り越えなければならない“障害”は多い。
2013年に店舗スタッフ約1万1000人にiPadを支給するなど、ワークスタイル改革に意欲的に取り組む企業として有名な「資生堂」も、こうした障害を乗り越えるためにさまざまな工夫をしてきたという。
グループ会社100社超、従業員3万人超の大企業は、いかにしてスピーディーにワークスタイル改革を実現させたのか。2015年10月に行われた「NTT Communications Forum 2015」で、同社 情報企画部部長の亀山満氏が改革の裏側を語った。
亀山氏が資生堂に入社したのは2012年のこと。当時の資生堂は、旧来型のメール・スケジューラーを使っており、会議の資料は基本的に紙ベース。会議室にプロジェクターもないという状況だったという。
「入社当初は、『およそ時代に沿ったワークスタイルではない』とびっくりしたのを覚えています。資生堂には143年の歴史がありますが、あと100年続く企業にするために、ITで働き方を変えようと考えました」(亀山氏)
とはいえ、資生堂ほどの大企業となると、システムを変えるのも容易なことではない。亀山氏はまず予算部門、総務、人事、経営企画といったカギとなる関係部門全てを巻き込み、“ワークスタイル変革プロジェクト”を始動。IT部門で検証した施策を各部門のメンバーに素早く展開し、裏付けが取れたらその場で決済する――という体制を整えた。
次に亀山氏が行ったのは現場および経営陣とのコミュニケーションだ。特に経営陣とのコミュニケーションは戦略的に行ったという。少ないコンタクトのチャンスを有効に使うため、他社の情報漏えい事件に合わせて自社の対策を報告するなど、タイムリーかつ分かりやすい説明を心掛け、経営会議でIT部門のアピールを重ねた。
このほか、経営陣専用のヘルプデスクを設けたり、彼らとITベンダートップとの面談などもセッティングしたそうだ。そしてその裏で“したたか”に、経営陣を驚かせるような仕掛けも準備していた。
Copyright© 2015 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.