【ワシントン=吉野直也】米海軍のイージス駆逐艦が現地時間の27日早朝、中国が「領海」と主張する人工島12カイリ(約22キロ)以内の海域に向けて航行を始めた。ロイター通信が米国防当局者の話として伝えた。中国の反発は必至で、米中の緊張が高まる可能性がある。
米駆逐艦は横須賀基地配備の「ラッセン」で、P8など米対潜哨戒機が同行する公算が大きい。派遣先は南沙(英語名スプラトリー)諸島で、スービ(中国名・渚碧)礁、ミスチーフ(美済)礁を想定する。スービ、ミスチーフとも中国による埋め立て工事前は満潮時に水没する暗礁で、国際法上、領海とは認められない。
米国防総省のデービス報道部長は26日、記者団に「海洋権益を過度に主張する国に対抗する。我々は航行の自由のための作戦を日常的に実施している」と述べた。国際法を無視した中国の行為を容認しない立場を重ねて強調した。
米軍はさらにフィリピンやベトナムに近い南沙諸島の岩礁周辺への軍艦派遣も検討中。「特定の国を標的にしているわけではない」(デービス氏)という米政府の建前と辻つまを合わせ、対話による問題解決の余地も残す。
米軍は今年5月以降、中国が造成する人工島12カイリ内に米艦船や航空機を送る考えを明らかにしていたが、ホワイトハウスが「待った」をかけていた。9月下旬のオバマ米大統領と中国の習近平国家主席との会談でも、習主席は人工島造成の中止要請を拒否した。オバマ氏はその直後、米艦船派遣を了承し、米側は関係国にその方針を伝達した。
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