小学校の前身の国民学校に通っていた時代、高学年になると新学期の最初の宿題として家訓を書いてくるというものがありました。各クラスごとに名の知れた両班(ヤンバン=朝鮮王朝時代の貴族階級)出身の生徒が何人かいましたが、その他の生徒は全く知らない都会に出てきて貧しい生活を送っていたため、宿題に合わせて家訓を新しく作らなければならないケースがほとんどでした。こうして作られた家訓の中で特に多かったのが「正直」という単語だったのを今でも覚えています。
「うそはいけない」という教えを特に強調していた時代だったため、家訓というよりはむしろ子どもに聞かせたい「しつけ」の言葉を代わりに書いたものと思われます。このような教育を受けてきた私たちは、うそが人間関係を悪化させ、その人の信用を損なうものといった印象を頭の中に植え付けるようになりました。
うそについて研究してきたカリフォルニア大学(UCSF)のポール・エックマン名誉教授(心理学者)によると、人は8分ごと、1日に200回以上うそをつくといいます。本当にそんなに多いのかと疑いたくなりますが、「私、最近太ったみたい」と独り言のように話す妻の言葉に対して「そんなことないよ」と答える会話に始まり、1週間立て続けに「今日のランチは清麹醤(チョングクチャン=発酵させた大豆のペースト)でどう?」と聞いてくる上司の問い掛けに対し思わず「いいですね」と答えてしまうこと、さらには部署ごとの夜の会食で酔ってしまい「皆さん、愛しています」と叫んでしまったものまで一つ一つを挙げてみると、どんな意味合いであれ多くのうそをつきながら一日を過ごしているということが分かります。