昨日のマルシェ出店から一夜明け、寝不足と筋肉痛で気力が萎えたままですが、今週末のお店のオープンの準備に向けて今日から猛ダッシュです。しかし、土曜日にレセプションなのに、月曜日に什器の発注とかしてて、本当に間に合うんだろうか。心配です。
で、いま、新しいお店の内装について考えていて、色の設計とか什器の配置とかをなんだかんだとやっている最中です。そんな中、飯を食うのを忘れてたな、というので久々に吉野家に行ってきたんですよ。そしたら、ちょっと衝撃的な光景を目にしてしまって、思わずいろいろと考えてしまいました。
店内に入ってびっくり、一瞬10年前のアフタヌーンティーのTEAROOMかとおもいました。どこをみても
木目!木目!木目!
明るい木目調の店内と、薄いグリーンの壁紙と、麻で編んだ模様がプリントされたビニールクロスが、これでもかと目に入ってきます。窓から差し込む明かりが、吉野家のカヒミ・カリィ化を一層引き立てています。クロテッドクリームたっぷりのスコーンとニルギリを楽しむ場所にしか見えない店内で、お腹をすかせた腹ペコサラリーマンが、
「ロース豚丼 十勝仕立てと、豚汁、あと卵もね」
とオーダーするわけです。もうこれは、10年前のカフェブームの時に散見された、カフェというから喫茶店だと思って生姜焼き定食でも食おうかと入ったお店でランチのロコモコ丼を食わされる中年サラリーマンの姿を再現しているとしか思えません。
しかし、どうして吉野家は木目調のアフタヌーンティー化を進めたんでしょうか、気になってホームページを見たら、こんなことが書いてました。
なるほど、吉野家は「家族向け」にシフトしようとしているんですね。それで納得です。しかし、僕が行ったのは平日の午後3時という時間帯だったので、家族連れはいませんでしたが。でも、家族揃って吉野家に行くシチュエーションって、週末のお昼とか、そんな感じで限定されると思うんですよね。週7日の中で2日だけ、しかもお昼時という短い時間帯。どうして吉野家は利用機会の少ない家族向けにシフトしようと思ったのでしょうか。
しかも、家族向けにシフトしようとしているのに、女性が多く頼むであろう牛丼のミニサイズの単品販売を中止し、牛丼のミニサイズを頼む場合は自動的にサラダとのセットにされて価格も400円になって、なぜか並盛りよりも20円も高くなるという不思議な価格設定を採用しました。謎です。
と思ってたら、とんでもないものを発見してしてしまい、吉野家の今後のおそろしい戦略を知ってしまったのです。
そうです、よっぴーです。
UFOで移動する謎の生命体。UFO「Unidentified Flying Object」(アンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト)に乗ってどこへでも飛んで行ける謎の生命体。乗っているのは、ツノを生やし、謎の金属らしき物体を鼻に装着した、オレンジ色の肌のUMA(Unidentified Mysterious Animal)です。名前をよっぴーと言うらしいです。
このよっぴーについてネットで色々調べると、普段は人間の姿をしていて、かなり有名な方みたいです。
で、本題に戻って、飲食店は家族向けにシフトするのがここ数年のトレンドのようです。その家族向けシフト時に必ずと言っていいほどに多く採用されるのが店の「内外装の明色化」です。明るい木目調、淡いグリーンの壁紙、天然繊維のファブリック、エコやナチュラルを意識した色彩計画で家族連れを呼びこもうとしています。
ちょっと思ったのですが、家族向けにシフトするのって、低価格路線の業態が多い気がします。低価格路線の業態で利益を増やそうとすると、家族を呼びこむ、1単位あたりの客数を増やすということでしょうか。それまでは一人客が多かった吉野家に、カップルや家族連れを呼び込んで、とりあえず客単価を上げるのは置いといて、テーブル席を作って椅子を埋めよう、ということなのかもしれません。
客単価を抑えたまま、テーブル席を増やして回転を上げるって、出来るんでしょうかね、そのへんはよっぴーがなんとかしてくれるんだと思います。
そんな家族向けにシフトした吉野家なら牛丼並で380円、卵を付けてもプラス60円ですが、こんかい比較するスターバックスの新商品「フルーツ クラッシュ & クリーム フラペチーノ」はワンサイズで550円。
家族4人で「フルーツ クラッシュ & クリーム フラペチーノ」を頼んだら2,200円ですよ。吉野家で家族4人で牛丼並だと1,520円なのに。そう考えると、家族向けに適しているのは低価格路線の吉野家は向いているのかもしれません。スタバはどっちかというと意識の高い方がマックブックを開いているイメージが強いので、家族連れを呼びこむとは程遠いイメージかもしれません。
で、そんな客単価の高いスターバックスの内外装が、最近めっきり「暗色化」しているのはみなさんご存知かと思います。表参道B-SIDE店は藤原ヒロシ氏が企画段階からディレクターとして参加しているそうです。
最近のスタバ、とっても黒いです。「黒」は従来の飲食店は避けていた色です。高単価が浸透したいま、さらなるイメージ戦略を進めようとしているんでしょう。ブルーボトルは「OBS合板にステンレス天板」という組み合わせのカウンターを設置することで、エコとナチュラルと清潔感を演出するなら、スタバは「アイアンのサインとレザーの家具」で強く重厚な店作りをしているような気がします。スタバが「サードプレイス」なら、ブルーボトルは「西海岸で飲む、いつもの味。」だということなので。
ブルーボトル日本開店おめでとう。西海岸で飲む、いつもの味。僕にとって新鮮みがないことが、成功の証だと思う。 #coffeecount http://t.co/JDyouh0PG1 pic.twitter.com/KUqf1CGYdp
— Taro Matsumura 松村太郎 (@taromatsumura) 2015, 2月 6
まあ、色々書いたんですが、単純に高級路線は色を暗色に持っていくことが多いです。吉野家が家族向けにシフトするのは時代の流れもあるでしょうし、商品単価を上げられないという事情もあるでしょう。でも、内装が変わったから吉野家に行くか!というお客さんはまずいないと思おいます。
一方スタバは発信力が強いので、店の内装デザインも提供する商品やサービスのひとつですから、「おしゃれなスタバが出来たってよ、いってみようか」となるわけです。だからフラペチーノが1杯550円でも喜んで飲んでくれるのです。
高級な商品を売るには店を黒くする。これはもう知られたことですが、ブルーボトルのように、ストーリーを全面に打ち出してしっかりと単価を維持するという方法も、サードウエーブとしてはあるのでしょう。
しかし、飲食店とデザインがきちんと紐ついて人気が出ているブランドが、すべて海外から進出してきた黒船ブランドというのが、なんだか悲しいですが、客単価を高くするなら店を黒くしたほうがいいし、価格決定権を客に握られた吉野家は内装を「明色化」し、家族連れにシフトしなければならず、価格決定権を提供側が握っているスタバは内装を「暗色化」して、客とのコミュニケーションを掌握しさらなるコントロールに動いているようにも思います。
というわけで、ウチの新しいお店の内装は黒でいきます。