グルメ漫画やエロ漫画はあるのに、睡眠漫画は無いのは何故だろう?
興味深く読みました。ブコメの「サルまん読め」というコメントから「眠り人眠太郎」というマンガが作中内にあって、その疑問に答えていたことも知りました。ありがとうございます。
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上巻 (BIG SPIRITS COMICS)
- 作者: 相原コージ,竹熊健太郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/08/28
- メディア: コミック
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サルまんは読んでいたんですが、とんち番長とちんぴょろすぽ〜ん*1 しか覚えていなかったので、 買って読みます。
感情を掻き立てる言葉と相性の悪い睡眠欲
さて本題。
前述したブログ記事のブコメに「『美味い』『エロい』に相当する睡眠の言葉ってあるのかな」と書いたところ、「眠い」がそれに当たるのでは、というリプライがありました。しかし、僕はそれには当たらない、と思っています。そしてそれは、睡眠というものの異質性を示すものだと思っています。
例をあげると、
「このラーメン美味い!」「あの女エロい!」はどっちも意味が通じます。
では、「この毛布眠い!」はどうでしょうか。意味がわかりません。
「A美味い!」「Bエロい!」という場合、「A[が]美味い」「B[が]エロい」というように、言っている私(主体)がAに対して抱いている感情の表明になります。Aは食欲をそそる対象物であり、Bは性欲を掻き立てる対象物です。
しかし「眠い」という言葉は、主体の状態を表す言葉であり 、「対象物によって私(主体)の欲求を引き起こす」という意味は含まれていません。「眠い」という言葉が「美味い」「エロい」という言葉に相当するものでないと考える理由はこれです。睡眠欲を引き起こすのであれば「眠くなる」「眠気を誘う」というように言わなくてはいけません。
また、「食欲をそそる」「性欲を掻き立てる」というように、感情・欲望などを起こさせる言葉は、睡眠欲にはあまり用いられません。「睡眠欲をそそる」「睡眠欲を掻き立てる」 とは書きません。*2 「眠気を誘う」という表現はありますが、誘うの辞書的な意味は、
さそ-う
①ある事をするように勧める。勧めてともに行く。いざなう。
②ある行為をするような気分にさせる。うながす。
③ものを持ち去る。人をさらう。
となっています。どうも睡眠欲は「欲求を沸き立たせる」「情欲を引き起こす」といった、感情を直接刺激する言葉、引き起こす言葉とは相性が良くないように思えます。そもそも、睡眠という行為自体が「沸き立たせる」「引き起こす」という動的な行動とは対極にあるように思えます。
他者と共有が難しい睡眠体験
前述したとおり、「このラーメン美味い!」「あの女エロい!」はどっちも意味が通じる言葉であり、肯定・否定が可能な言葉でもあります。食欲と性欲は各人の趣向の違いはありますが、意見のすり合わせは可能です。
一方の睡眠。果たして睡眠が心地よいかどうか、どうやって肯定・否定すればよいのでしょうか。食欲や性欲は、例えば同じラーメンを食べたり、同じ人を見たりあるいは性行為に及ぶことで、ある程度感覚は共有は可能です*3。
しかし、睡眠欲は主体の体験の共有はまずできません。寝具を揃えたりすることは可能ですが、睡眠は特に主体の状態に左右されるものであり、主体が違う以上、同様の睡眠体験は得られるかもしれないけど共有はできないのではないかと思います。
睡眠欲は、感情を掻き立てる動作とは対極にあり、睡眠の行為自体は他者と共有が難しい。そう考えると、睡眠漫画がギャグとして成立はしてもグルメ漫画、エロ漫画に並ぶ一大ジャンルとなり得ない理由も分かる気がします。
果たして睡眠をテーマにした傑作物は今後現れるのでしょうか。
それでは、また。
*1:「ちんぴ」までで「ちんぴょろすぽーん」まで出すGoogle日本語入力はすごい。「ー」が「〜」だったらもっと良かった。
*2:もしこういう用法があったら教えて下さい。私も不学ゆえそこまで詳しくはないのです。
*3:主体の状態により、同じものを食べたりしても感覚は変わることはありますが、一旦それは置いておきます。