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慢性歯周炎の急性期の発生は気象変化後1〜3日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)予防歯科学分野の森田学教授、竹内倫子助教らの研究グループは、「慢性歯周炎が急性化するのは気象変化後1~3日である」ことを、時系列分析で突き止めました。本研究成果は8月5日、「International journal of environmental research and public health」電子版で公開されました。
 本研究により、気象変化による慢性歯周炎の急性期の発生を予測ができると期待されます。
<業 績>
 慢性歯周炎が何らかの原因で急性化すると、歯の周囲の組織破壊が急速に進みます。森田教授、竹内助教らの研究グループは、岡山大学病院予防歯科を受診している「安定期にある慢性歯周炎患者」延べ2万人を調査し、慢性歯周炎の急性期の発生と気象状態との関連を分析しました。
 慢性歯周炎の急性期症状を発症した症例(発症率1.87%)のうち、歯科関連の要因が発症要因とは考えにくいケースに注目。「気圧低下の毎時変化が大きい」、「気温上昇の毎時変化が大きい」といった気象変化があった日の1~3日後に急性期症状を発生しやすいことを突き止めました。
 メカニズムは不明ですが、気圧や気温の変化がホルモン分泌や循環器系に影響し、慢性歯周炎の急性期の発生に関与した可能性が考えられます。
 慢性歯周炎の急性期の発生は歯周病原細菌の感染と宿主の応答に関係します。本研究では、細菌と宿主に気象変化が影響する可能性を示しています。

<見込まれる成果>
 40歳以上の日本人における歯周病罹患率は8割を超えているといわれており、歯の喪失原因の約4割を占めています。よって、慢性歯周炎の急性期の発生を予測することは、歯の保存のためにも重要です。気圧低下や気温上昇の毎時変化がどの程度あれば慢性歯周炎の急性期症状(痛み・腫れ)が発生するのかなど、さらなる研究を重ねることにより、慢性歯周炎の急性期の発生予報ができると期待されます。

 本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費補助金「挑戦的萌芽」(課題番号25670892、40157904)の助成を受け実施しました。


<補 足>
 さまざまな疾患において、気象の変化によって症状が出現したり悪化したりすることが報告されています。例えば、血圧、心筋梗塞、熱射病、脳卒中、自殺、喘息、うつ病、関節リウマチ、頭痛、顎関節痛などがあります。特にうつ病、三叉神経痛、リウマチなどは気圧変動に関連があるといわれています。

<語句説明>
1) 慢性歯周炎:歯周病原細菌によって生じる付着の喪失と歯槽骨吸収を伴う慢性炎症性疾患で、宿主の組織抵抗性が低下したときに急性化する。
2) 時系列分析:時間経過ごとに記録された数値列からモデルを作成して、将来の予測を行う分析手法。

<論文情報>
発表論文:Relationship between Acute Phase of Chronic Periodontitis and Meteorological Factors in the Maintenance Phase of Periodontal Treatment: A Pilot Study. 著  者:Takeuchi N, Ekuni D, Tomofuji T, Morita M.雑  誌:International journal of environmental research and public health 2015, 12,
9119-9130; doi:10.3390/ijerph120809119.


発表論文はこちらからご確認いただけます。


<お問い合わせ先>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
予防歯科学分野 教授 森田 学
(電話番号)086-235-6712
(FAX番号)086-235-6714
(URL)http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~preventive_dentistry/top.html