無意識に視線追う脳の部位特定 京大、自閉症治療に期待
無意識に他人の視線を追う時に活動する脳の部位を、京都大医学研究科の佐藤弥(わたる)准教授(脳科学)らの研究グループが解明した。視線を介したコミュニケーションに障害があるとされる自閉症の原因解明につながるという。9月中旬に米科学誌で発表した。
人が無意識に他人の視線を追うことは分かっていたが、脳内メカニズムは不明だった。
実験は20代の男女27人が対象。無意識に他人の視線を追った時の反応を調べるため、視線を被験者へまっすぐ向けるか、左右のどちらかにそらしている3種類の人の画像を、意識できない短時間だけ各被験者へ提示。「機能的磁気共鳴画像装置」(fMRI)を使って脳で血流量が増えて活性化した部位を観測した。
その結果、左右に視線をそらしている画像を示された時だけ、被験者の脳幹や扁桃(へんとう)体が活発に活動した、という。
脳幹や扁桃体は多くの動物に共通してあり、進化の過程では「古い脳」とされる。一方、通常の視覚認知では「新しい脳」である大脳新皮質が主に活動していることが分かっている。
佐藤准教授は「自閉症の人でも、視線を処理する時の脳の働きを解明したい。病変部位が分かれば、治療法開発にも期待できる」としている。
【 2015年10月26日 11時27分 】