*場面は: ファルザスの古戦場で 、辺りは暗黒である。。。
魔女・エリヒトーの独白 から
>>>ハーイ、あたしはエリヒトー、夜の魔女よ。。
毎年のことだけど、今宵も魔女たちの祭りに参上したわ。。
やくざな詩人たちが、大げさに悪しく言うほど、あたしは不気味な女では
ないのよ。。。褒めるにしても、貶(けな)すにしても、詩人というのは
際限を知らないんだから。。・・・
あら、見渡せば谷間はもう、灰色のテントばかりで、波打っているわ。。
あの蒼白く霞んでいる波のまにまに、過ぎし日の不安や恐怖が、
夜の幻の中に交じりあっているのだわ。。
もう何年、これがくり返されてきたことかしら。。。そしてまた、
これから先も、何年、繰り返されていくのかしらね。。。
そう易々(やすやす)とは自分の国は、人手に渡したくないものよね。。
力ずくで掠奪し、力ずくで統治しても、長続きするはずはないもの
なのにね。。
・・他の国を奪い取り、他国を支配したがるのは、権力欲と利己的
愛国心と驕慢のためかしらね。。。
そうよ、ここもそういう大きな戦(いくさ)のあった古戦場なのよ。
暴力と暴力とが対峙した古戦場なのよ。。美しい花や自由の花環が
あえなく引き千切られたところなのよ。。。月桂樹の冠が略奪者の頭を
虚しく飾ったところなのよ。。
こっちの岸辺では、ポンペイウスが過去の栄光に酔っていたところ
かと思えば、対岸ではシーザーが運命の秤(はかり)の針を覗っていた
ところでもあるのよ。。。やがて、いくさが始まったのだけれど、
勝利の女神はどちらに微笑んだかは、誰も知ってのとおりね。。。
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