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国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は4月上旬、2014年の世界の死刑に関する報告書を発表した。これによると、中国が国・地域別では突出しており、「数千人に上る可能性がある」と指摘。新疆ウイグル自治区で頻発する暴力行為に対し、「テロとの戦い」を口実に弾圧手段として死刑を利用していると批判した。
前回の連載で、ウイグル人は「この世の地獄で生きている」と書いたが、漢民族の支配は非常に巧みで、差別と弾圧は広範囲にわたっている。
「国家統合」の名の下、漢民族の生活様式がウイグル人に押し付けられている。中国語教育が強制され、学校ではウイグル語の使用が制限されている。ウイグル人はイスラム教徒なのに、イスラム的な教育や服装、例えば、男性のあごひげや、女性の顔隠しスカーフは取り締まりの対象になっている。就職でも差別を受け、経済発展から取り残されている。
習近平国家主席率いる中国政府は、どうして、ここまで苛烈なのか。
私には、ウイグル人を民族として抹殺しようとしているとしか思えない。歴史を振り返れば、ウイグル人は侵略者に屈服したことがない。武力で制圧されて一時は従属しても、独立を勝ち取ってきた。「中華民族の偉大なる復興が、中国の夢」だと公言する習主席にとって、ウイグル人の「独立」という悲願は障害でしかないのだろう。
チベット自治区への対応もそうだが、中国の「自治区」は決して自治権を与えるものではない。単に、独立の夢を摘み取る「罠」に過ぎない。中国の究極の目的は、ウイグル人やチベット人など、少数民族のアイデンティティーを抹殺して、漢民族に同化させることだ。これを受け入れる者は生かすが、抵抗すれば「テロとの戦い」などを口実に排除する。単純明快である。