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生活保護受給世帯は健康で文化的な最低限度の生活を送れているのか?

前回のエントリにおいて被生活保護世帯数、保護費総額が近年急増していることを取り上げたが、こうした話をすると、働いている自分よりも保護費をもらっておいて贅沢するな、という意見が出てくる。そもそも生活保護受給世帯は贅沢する余裕があるのだろうか?

厚生労働省は平成22年に生活保護受給世帯の生活実態及び生活意識を把握し、今後の社会保障全般のあり方の検討を行うために、家庭の生活実態及び生活意識に関する調査を行っている。今回は本調査を元に生活保護受給世帯の生活実態を見てみたい。

贅沢とは程遠い生活保護受給世帯の生活実態


次のグラフは、生活保護受給世帯の状況を一般世帯の状況と比較したものだ。





赤いラインは全国消費実態調査の第1十分位相当世帯を表している。年間収入十分位階級は,世帯を収入の低い方から高い方へ順に並べ10等分した10のグループのことで,収入の低い方から順に第1、第2、……第10分位階級となる。つまり、第1十分位相当世帯は10段階で最も収入の低い階級である。最も貧しい世帯と言える。

一方、緑のラインは第3五分位相当世帯の水準を表している。年間収入五分位階級は,年間収入十分位階級の第1階級と第2階級,第3階級と第4階級というように階級を2つずつまとめて1階級としたものであり、第3五分位相当世帯は5段階で中央の階級である。標準的な世帯と言えるだろう。

棒グラフの色は第1十分位相当世帯を超えるものを青く、第1十分位相当世帯の水準より劣るほど赤く示している。一見で分かるように殆どの項目は赤くなっており、最も低い収入層よりも貧しい状況にある。率直に言って贅沢の余裕など無い。

細かく見てみると、普段の生活に関する項目では比較的良好な状況が得られている。贅沢を避けて生活に最低限必要な基礎部分を守ろうとしているのだろう。一方で、耐久財の保有状況を見ると、三種の神器と呼ばれる冷蔵庫、洗濯機、テレビについてはほぼ行き渡っているが、エアコンの普及率は7割、自動車や温水洗浄便座等の普及率は著しく低い。自動車の放棄は受給条件と捉えられている面もあり、最近報道されたところでは、必要な自家用車を維持するために生活保護の受給を諦め、子供が歯医者にかかる事ができないほど困窮した事例もあった。

親族・近隣とのお付き合い、レジャーや社会参加は極めて限定的だ。これを見ると社会から断絶されて、家に引きこもりひっそりと生活している生活保護受給世帯の実態が見えてくる。インターネットの利用率も低く、ネットさえできない。現在の村八分と言えるかもしれない。この状況は果たして健康で文化的な生活が送れていると言えるだろうか? 少なくとも生活保護受給世帯が贅沢をしているという批判は的はずれだ。

余裕のなさが社会から孤立させる


次に主な設問において、「余裕が無いこと」を理由にした回答の割合を見てみよう。





外出着は季節の変わり目にさえ余裕がなくて買えない世帯が多く、毎日入浴ができない世帯も多い。先日保護された姉妹が1ヶ月ぶりに入浴したというショッキングな事例が朝日新聞で報道され話題になっていたが(生活保護は打ち切られていた)、特に子供がいる世帯において、子供に清潔な衣服を与えることが出来なかったり、入浴させてやることも出来なかったりすることがあるとすれば問題だ。

医者、歯医者に余裕がなくてかかれない世帯の割合は比較的少数である。皆保険制度が寄与している事は明らかだが、一方で必要がなくても医者にかかり医療費を無駄に増大させていることが無いかは常にチェックする必要がある(これは生活保護受給世帯に限った問題ではない)。

友人に会いに行くこと、親族の冠婚葬祭への出席、宿泊旅行、外食については余裕がないから断念している世帯が多い。新聞、インターネットの利用についても余裕が無いためできていない世帯が目立つ。外出もせず、外部情報も遮断されているのであれば危険だ。これらは社会との関わりを希薄化し、生活保護受給世帯を社会から断絶させる要因になりかねない。余裕の無さが村八分的な状況を生んでいるのだ。

このあたりは、贅沢と批判されがちな部分でもあると思うが、社会生活を送る上では必要な要素であり、現状のレベルが適正なのかどうかは議論の余地があるだろう。特に子供がいる世帯が気がかりだ。

生活保護のあるべき姿とは


現状の生活保護は身体的に健康な最低限度の生活を送れる水準にはあると考えられるが、精神的に健康で文化的な最低限度の生活を送れる水準にあるかどうかは怪しい。文化的な生活がどのレベルを指すのかについては多くの意見があり、中には贅沢だと思う人もいるかもしれない。

生活保護は批判を浴びることが多い。生活保護の不正受給生活保護ビジネスなどの不正は確かに存在するが、2010年時点における不正受給は、件数ベースで全体の1.8%、金額ベースで全体の0.38%であり、全体から見れば極わずかな割合である(もちろんすべてが露見しているわけではないが)。全体を見れば、生活保護を必要とする世帯に保護の手が行き渡らず、受給世帯においてさえ十分な給付が行われているとは言いがたい現状がある。少数の不正受給への対策のために、現物支給に変えるといった手法は、大多数の善良な受給者の自由度を著しく毀損することになりかねず、安易に導入されるべきではない。

財源は無限ではない。前回とりあげたように、給付額の急増により制度の持続可能性が危うくなっている。そもそも全ての人に健康で文化的な生活を保証することなど不可能なのかもしれない。

少なくとも時代を担う子供たちが健やかに生活できる環境が担保される制度になることを望みたい。

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