Updated: Tokyo  2015/10/26 13:24  |  New York  2015/10/26 00:24  |  London  2015/10/26 04:24
 

米金融当局を悩ます自然利子率、利上げ時期やペースも左右

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    (ブルームバーグ):米国の事実上のゼロ金利政策には、実際どの程度の景気刺激の効果があるのか。連邦準備制度の当局者にも確かなことは分かっていない。

ここで問題となっているのは、経済が完全雇用と安定的なインフレ率の状態にあることと合致した実質金利である「自然利子率」の水準だ。

大恐慌以来最悪のリセッション(景気後退)の後、自然利子率が現在どの水準にあるかは学界だけでなく、米金融当局のエコノミストの間でも意見が分かれている。金融当局が金利引き上げに踏み切った後も、緩やかなペースで利上げしていくとする理由の1つでもある。

米カリフォルニア大学サンディエゴ校のジェームズ・ハミルトン教授(経済学)は自然利子率について、「はっきりしているのは誰も分からないということだ」と話す。

自然利子率は理論上の概念で、推計するしかない。だが、自然利子率の水準が重要なのは、主要政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利との位置関係次第で、金融政策が実際にどの程度景気刺激的であるかが決まるためだ。

連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長や同議長の同僚の多くが指摘するように、ゼロ近辺に据え置かれているFF金利を自然利子率が大きく上回っているならば、利上げ開始後も金融政策は引き続き緩和的で、さらなる投資や雇用を促すことになる。

一方で一部に指摘があるように、双方の差が小さいか、自然利子率が大幅に低下してゼロないしマイナスの水準にあるとすれば、金融引き締めの早い段階であっても米金融当局者の予想よりも景気抑制的に作用する可能性がある。

BNPパリバの米国担当エコノミスト、ローラ・ロスナー氏(ニューヨーク在勤)は「適切な水準がどこかに関しては不確実性が強い」とし、こうした見解の違いは「金利政策をめぐる不一致を強めることになるだろう」と語った。

27-28両日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、FF金利の誘導目標据え置きが見込まれている。それでもイエレン議長らは最近、見通しに変化がなければ、年内利上げが正当化されると考えられると発言し、12月のFOMCに注意を向けている。

当局者らはゆっくりと利上げを進めると繰り返し言明している。しかし、金融当局者が推計する自然利子率の水準が、利上げ開始の決定時期やその後の利上げペースを左右することになるのだ。

原題:Are We Tight Yet? The Fed’s Problem in Finding the Neutral Rate(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Jeanna Smialek jsmialek1@bloomberg.net;ニューヨーク Matthew Boesler mboesler1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Carlos Torres ctorres2@bloomberg.net

更新日時: 2015/10/26 07:30 JST

 
 
 
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