八木拓郎
2015年10月26日10時43分
違法薬物を現場で鑑定するため、警察庁は、持ち歩ける大きさの鑑定機器の導入を検討している。現在は試薬を使っているが、対象の薬物が覚醒剤などに限られている。覚醒剤を正確に鑑定できるか、来春から実証実験する方針で、将来的には危険ドラッグを含む様々な薬物への活用を目指す。
国内の薬物事件で摘発される人の95%以上を占める覚醒剤と大麻には簡易鑑定用の試薬があり、陽性かどうか警察官が色を見て判断する。警察庁の担当者は「人間なのでミスはある。機器に頼れるならその方が良い」と話す。
社会問題化した危険ドラッグは試薬がない。種類が多く、化学構造の似た商品が次々と出回るためだ。所持していた人物が「違法薬物だ」と供述しても逮捕できず、各都道府県警の科学捜査研究所で鑑定し、違法薬物とわかった段階でようやく逮捕できる。鑑定が集中すると数カ月待ちという状況だ。試薬で鑑定できない薬物は他にも多数ある。
警察庁は米国などで捜査に使われている携帯式の鑑定機器に着目した。大きさはノートパソコンや携帯ゲーム機程度のものなど複数あり、光を当てて反射・吸収する光の波長などから薬物を特定する仕組みで、鑑定できる種類も多い。
警察庁は昨年から、科学警察研究所(千葉県柏市)で携帯式の鑑定機器を使って覚醒剤の鑑定を繰り返してきた。誤鑑定を防ぐため、化学構造が似た危険ドラッグや薬品についても波長などを調べ、確実に識別できるか確認した。その結果、実証実験に踏み出す価値があると判断した。
警察庁は来年度当初予算の概算要求に、数台のレンタル費用として約250万円を盛り込んだ。薬物事件の取り扱いが多い警察本部で簡易鑑定に使ってもらう。対象は主に覚醒剤で、結果は、逮捕手続きなどの証拠としては使用しない。
1年間やってみて、現場で使いこなせるか、正確に識別できるかといった点を確かめる。警察庁の担当者は「時間はかかるだろうが、実用化できれば捜査環境が飛躍的に改善する。実験結果を見ながら慎重に検討したい」と話している。(八木拓郎)
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