老人ホーム:千葉でも入所者転落死、遺族提訴 川崎と同系
毎日新聞 2015年10月26日 08時40分
3人が転落死した川崎市の介護付き老人ホームと同系列の千葉県の施設で2013年、入所していた東京都の認知症の男性(当時86歳)がベランダから転落して死亡し、遺族が運営会社に3400万円の賠償を求め東京地裁に提訴したことが分かった。遺族側は転落防止策を求めたのに講じられなかったと主張し、14年2月に提訴。会社側は「転落の予見は困難だった」と過失を否定している。
男性が転落死したのは、「メッセージ」(岡山市)が運営する千葉県の介護付き有料老人ホーム。男性は物忘れや夜間に歩き回る症状があり、要介護度1の認知症と診断され13年5月に入所した。介護サービスを受け4階個室で生活していた。
訴状などによると、遺族は入所時に「窓にストッパーをつけ、ベランダに出られないようにしてほしい」と要望したが、ホームは窓の網戸と窓枠を粘着テープで固定して対応した。しかし同9月、男性が網戸を破ってベランダに出ることがあり、遺族は改めて対応を求めていた。
その後も要望通りの対応は行われず、同月23日未明、男性が自室のベランダ外壁(高さ88センチ)の上にしゃがんでいるのを巡回中の職員が発見した。声を掛けたが男性は転落し、地面に頭を強く打って約1カ月後に死亡した。
遺族は毎日新聞の取材に「過去に入所していた別の施設でベランダに出て転倒する事故があり、入所時に危険性を伝えた。人の命を預かる立場なのに、安全への意識が低すぎる」と憤る。一方、メッセージ側は訴訟で「ベランダの外壁の高さはその上の鉄柵を含めて110センチあり、転落防止に十分だった。入所時に網戸を固定する対応で了承を得ていた」と反論している。
メッセージを巡っては、子会社が運営する川崎市の施設で昨年11〜12月に高齢者3人がベランダから転落死しており、神奈川県警が経緯を調べている。
また、大阪府豊中市の施設で今年6月に70代の女性入所者に対する虐待があったとして、厚生労働省が立ち入り調査をしている。
メッセージは毎日新聞の取材に「千葉と川崎の転落死に関連性はない」としている。【島田信幸】