ここ1~2年で、「ドローン」(自動操縦が可能な小型航空機)に対する注目度が急速に高まっている。実際に、さまざまな分野でビジネスでの応用を検討する企業が続々と出始めている状況だ。
そんな中で、「ドローン宅配サービス」をいち早く商用ベースで実現しようとしているのがMIKAWAYA21だ。高齢化が進む日本で増え続ける「買い物難民」を救い、それをサポートする側の人材不足も解消するという“一挙両得”を狙う。
ただし、口で言うほど簡単に実現できるサービスではない。実現に当たっての課題にはどんなものがあり、どう克服していつ頃サービスを提供するつもりなのか。前編に引き続き探っていく。
奈良県生駒市の新聞販売店で誕生した、購読者向けお手伝いサービス「まごころサポート」。これを全国に展開し、販売店と地域とのつながりを強固にするために誕生した企業がMIKAWAYA21だ。30分500円という手ごろで分かりやすい料金体系と、「顔なじみの新聞屋さんに身のまわりのことを気軽に頼める」という手軽さが受けて、「一度頼んだ人の多くが継続的に利用し続ける」という非常に高いリピート率を誇っている。
その一方で、販売店側では“新聞世代”の中心であるシニア世代のニーズにきめ細かく応えていくうちに、「スタッフの空き時間の活用」では足りなくなるという課題が浮上。そこで、人手不足を解消するべく「地域ママ」の雇用など人材確保に動く一方で、今後さらに深刻化するであろう人材不足を抜本的に解決する手段として生まれたのが「ドローン宅配」というアイデアだった(前編参照)。
2015年4月には、徳島県神山町でドローン宅配を想定したテストフライトを実施し、サービスの実現に向けての第一歩を踏み出した。ただし、この先ドローン宅配の商用サービス提供を実現するためには、クリアしなければならない課題がまだいくつもあるはずだ。MIKAWAYA21では今後、それらの課題をどのようにクリアし、いつ頃ドローン宅配サービスの提供を実現しようとしているのか。さらに迫っていきたい。
ドローン宅配をどのように実現する?
前回も紹介したが、ドローン宅配サービスのイメージは次のような形になる。まずコールセンターで商品の注文を受け付けると、新聞販売店から商店に向けてドローンを発進する。人間の代わりにドローンが「おつかい」に行くわけだ。
商店にドローンが自動着陸したら、店員に注文した商品をドローン下部に備え付けられた専用ボックスに入れてもらい、再度出発。他に買うべきものがあればそちらの商店へ、なければ注文者の自宅に向かう。注文者の自宅に到着したら、電話などで注文者に連絡し、商品をピックアップしてもらうことで配達が完了する。
このようなサービスを実現するためには、ドローンを決まった時間に人手を極力介さずに飛ばしてルート巡回を実現しなければならない。ドローンを使った実験などではよく、人が無線コントローラーを持って同行するケースが見られるが、それでは意味がない。商用サービスとして提供するためには遠隔・自動操縦でなければダメだ。
MIKAWAYA21の鯉渕美穂・代表取締役社長兼COOによれば、同社が4月に徳島県神山町で実施したテストフライトでは、「最初ということで、安全性などを考慮して手動で操縦していました」という。ただし、「本サービスではもちろんオートパイロット(自動操縦)で飛ばす予定です」(鯉渕社長)と説明する。
実際に、同社が利用しているドローンは既にオートパイロット機能を備えており、「A地点で高度何メートルでホバリングし、B地点からC地点に移動してD地点に着陸する」といった設定ができる。カメラを搭載しているので、オートパイロットで飛ばしつつ、新聞販売店などのスタッフが周囲の状況を遠隔モニターしながら安全に離着陸させることも可能だ。