中国でいま起こっていること
このたび『中国経済「1100兆円破綻」の衝撃』(講談社プラスアルファ新書)という新著を上梓しました。私にとって、これがちょうど20冊目の著作となります。
この本では、われわれ日本人も決して他人事では済まされない、中国経済の昨今の減速ぶりを、4つの側面から分析しました。
第一は、6月以来の「中国株暴落」が意味するものです。いまから4ヵ月前に突然始まった中国株の暴落によって、日本の人口よりも多い1億7000万人もいる「股民」(個人株主)たちが、大損しました。
日本ではあまり報じられていませんが、中国で台頭しつつあった中間所得者層を直撃した株暴落は、ボクシングのジャブのように、着実に中国経済をダウンさせつつあります。このことは、例えば日本に来ている「爆買い」の中国人観光客のショッピング動向にも、今後影響を与えてくると思われます。
第二は、中国経済の大転換が図れない象徴的存在である「国有企業」の問題です。中国は、1992年に、社会主義市場経済という世界のどこにもない社会システムを始めました。折からの社会主義国の友好国の崩壊を受けて、政治は社会主義を堅持するけれども、経済は市場経済に移行していくという方針です。
この鄧小平の「大発明」のおかげで、中国はその後、20年にわたって驚異的な経済成長を果たしました。しかし、いまやこの社会主義市場経済の弊害と矛盾が、抜き差しならないところまで来てしまっているのです。
その象徴が、中国に1100社余りある国有企業です。市場経済ならば企業は市場(社会)と株主に対して責任を負いますが、中国の国有企業が責任を負うのは、中国共産党に対してです。なぜなら中国は社会主義国家のため、共産党が企業経営者の人事と経営方針を握っているからです。日本では企業経営者が安倍首相をバカにしても一向に構いませんが、中国では習近平総書記の意向に逆らえる企業経営者は一人もいません。
こうした社会主義と市場経済の矛盾を解決するには、究極的には社会主義を捨てるか市場経済を捨てるかしかないのですが、習近平政権はどちらも捨てることなく、いまの矛盾に満ちた中国経済を「新常態」(新たな正常な状態)と呼んで正当化しようとしています。それで経済減速は、ますます加速していっているのです。
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