防衛装備庁が作られた背景としては、陸海空の自衛隊などで武器の調達を個別管理していたのをまとめ、コストの抑制を図るということにあります。
それならばそれだけやればいいのですが、この防衛装備庁の特徴は、名まえとは裏腹に装備の管理だけでなく、武器輸出の推進を担うことです。つまり、防衛装備庁は官民で開発した武器を海外に売り込む「旗振り役」を果たすのです。
戦闘機を、戦車を、軍艦を世界へ!防衛装備庁のロゴマークが露骨すぎる。
安倍政権は2014年3月、平和日本の国是とされてきた「武器輸出三原則」を廃止して、閣議決定で「防衛装備移転三原則」を定めました。
これにより、原則として他国に武器を輸出しないという国の基本方針を180度転換し、積極的に武器や開発技術を輸出できるようにしたのです。
装備庁の設置はこの武器輸出路線の延長線上にあり、野党の反対を押し切って防衛装備庁設置法案を6月に成立させたのです。オーストラリアや英国との間では既に潜水艦やミサイルの共同開発の協議が進んでいます。
「これらのことが結局日本の安全保障を強化するのだ」
という意見もありますが、その論理や道筋は私にはよく見えません。
イスラエルへの武器輸出が可能に 武器輸出禁止三原則を放棄し防衛装備移転三原則を閣議決定
ところで、防衛装備庁が発足する直前の9月、日本経済団体連合会(経団連)は「防衛産業政策の実行に向けた提言」を発表しました。
その中で経団連は
「防衛装備品の海外移転は国家戦略として推進すべきである」
としました。
武器輸出三原則が廃止され、防衛装備庁が発足した一番の理由は経済界、なかでも軍需産業からの要請によるものだということがよくわかるエピソードでした。
確かに、一般的・抽象的には、日本の産業が発展することや、輸出が伸びることは、日本に暮らす人にとっていいことでしょうが、「防衛装備品」とは武器や兵器、それらの部品、関連する装備や技術のことです。
ですから、日本に暮らす多くの人は、平和日本が武器輸出を進めることに賛成していません。共同通信社の2014年2月の世論調査では、7割近くの人が三原則の見直しに「反対」と答えています。
まだ、日本の市民の多くは武器輸出で儲けようと言うほどには、背に腹は代えられないとは思っていないのです。
経団連が武器輸出を日本の国家戦略として推進すべきと提言。政府は戦闘機建造施設に金融支援まで検討。
次期主力戦闘機F35は一機100億円とも200億円とも言われている。
さらに、民間企業の武器輸出を推進するため、防衛省が武器輸出事業に貿易保険の適用を検討しています。
この貿易保険は支払う保険金が巨額で民間保険会社では引き受けられない取引が対象で、独立行政法人が扱っていますが、保険金支払いで赤字運営になると国が不足分を補填(ほてん)する仕組みになっています。
1980〜90年代には、中南米債務危機や湾岸戦争で保険金支払いが急増して貿易保険財政は大赤字に陥り、一般会計からの繰り入れで穴埋めしました。国が債権回収の交渉をして一般会計に繰り戻すものの、「回収が難しいケースもある」(経済産業省)といいます。
つまり、武器取引で生じる損失を、国民の税金で負担する可能性があるのです。
軍需産業は大企業です。庶民には自助努力が求められるのに、軍需産業だけ国の保護を受けるのはおかしいでしょう?
それでなくとも、防衛装備品の調達では、業界との癒着がたびたび問題になってきました。旧防衛施設庁が解体されたのも、官製談合事件がきっかけでした。
さらに心配なのは、本当に日本の武器が海外に輸出されるようになったら、海外の紛争地域において、日本の武器で殺し合いが行なわれることになるわけで、日本が恨みを買い、テロの標的にもなりうることです。
武器輸出大国はことごとくテロの対象になっていることで知られているからです。
そうすると、一部の軍需産業の儲けのために、国民の税金が使われ、我々の命と安全が危険にさらされることになりませんか。
平和日本のブランドが喪われることで、日本の危険が増し、そしてプライドが失われます。
コストとリターン、メリットとデメリットを冷静に判断すべきです。
ところが、秘密保護法のせいで、事の是非の判断に必要な情報が我々の手元に来ない危険性も重大です。
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損失は税金で穴埋め 武器輸出に貿易保険
2015年9月23日 東京新聞朝刊
民間企業の武器輸出を推進するため、防衛省が武器輸出事業に貿易保険の適用を検討していることが分かった。貿易保険は支払う保険金が巨額で民間保険会社では引き受けられない取引が対象で、独立行政法人が扱っているが、保険金支払いで赤字運営になると国が不足分を補填(ほてん)する仕組みになっている。専門家は「武器取引で生じる損失を国民の税金で負担する可能性があり、保険適用は議論が必要だ」と話す。 (望月衣塑子)
政府は武器輸出を原則認める防衛装備移転三原則を昨年四月に閣議決定している。防衛省装備政策課は「国として武器輸出政策を推進するには、企業を支援するさまざまな制度を整える必要がある」としている。今後は具体的な武器輸出の事例などが出てきた際、国家安全保障会議で検討した上で、貿易保険の適用について判断していく方針。
貿易保険は独立行政法人「日本貿易保険(NEXI)」が扱う保険商品。国内企業による外国のインフラ整備事業など国策として支援の必要がある取引が対象となる。相手国の戦争や内乱などで輸出代金が回収できなくなったり、投資先が事業継続できなくなったりした企業に保険金を支払う。
現在は、保険金支払いのために積み立てた資金を超える支払い請求があっても、国の特別会計を使って請求に応じられる体制を整えている。
国が補填した分は相手国政府などの債務となるが、債務返済が不履行になった場合は、最終的に国が背負うことになる。
今年七月の貿易保険法改正に伴い、二〇一七年四月からNEXIは政府100%出資の株式会社に移行して、特別会計は廃止する。必要な場合、国の一般会計などから「政府保証などの財政措置を講ずる」としている。
貿易保険法を所管する経済産業省貿易保険課は「貿易保険は国策を進めるための制度で、政府が責任を負う必要がある。巨額な損失が出た場合は、国会の議論を経て、国が措置を講じるしかない」とする。
貿易保険の引き受けを審査するNEXIは「武器取引への保険適用は、政府の方針に沿って対応するが、引き受けるかどうかは、あくまでも輸出する武器ごとに個別判断する」としている。
慶応大学経済学部の金子勝教授は「武器輸出に貿易保険を適用することは、国策として武器輸出を奨励することだ。防衛装備移転三原則の理念からさらに一歩踏み込んだ形になる」と指摘。「国民の論理とは、かけ離れた安全保障会議の場でこれらが決定されることにも違和感がある。国民の理解は得られ難いのではないか」としている。
◆過去に大幅赤字
<貿易保険とNEXI> 貿易保険は、企業が貿易や海外投資を行う際にかける公的な保険。政情不安がある国などで行う取引のリスクを引き受けている。かつては国が直接運営していたが、1980〜90年代に中南米の累積債務問題や湾岸戦争の影響で大幅赤字に転落し、92年度には一般会計などからの借り入れが6800億円に及んだ。2001年に保険・投資業務の経験豊富な民間人を中心にしたNEXIが設立され、貿易保険を引き継いだ。これまでに、台湾新幹線プロジェクト(保険価格4700億円)やサウジアラビアの石油精製・石油化学総合プラント建設プロジェクト(同2000億円)などを扱う。14年度までの5年間の支払い保険金は、収入を大幅に下回る31億〜122億円にとどまっている。
<防衛装備移転三原則> 安倍政権が、昨年4月に閣議決定した武器の新たな輸出ルール。従来の武器輸出三原則は武器輸出を原則禁止し、例外を個別に認めていたが、新三原則では一定の条件下で輸出を認める原則容認に転換。(1)紛争当事国や国連決議に違反する場合は輸出しない(2)輸出を認める場合を限定し、厳格審査する(3)輸出は目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る−などと規定した。
武器輸出に貿易保険 政府が検討
“死の商人”を 税金で援護?!
損失に国の財政で穴埋めも
安倍晋三政権が武器輸出促進のため、貿易保険の活用を検討しています。貿易保険は輸出入や海外投資を対象とし、戦争などの「カントリーリスク」(外国固有の事情に起因するリスク)を日本政府が引き受ける制度。過去には保険金支払いで保険財政がひっ迫し、政府が一般会計から多額の税金を繰り入れたこともあります。貿易保険の活用は武器輸出企業の損失を税金で穴埋めする事態につながりかねません。
武器輸出への貿易保険の活用を検討してきたのは防衛省の「防衛装備・技術移転に係る諸課題に関する検討会」です。同検討会は、安倍政権が2014年4月に武器輸出を原則解禁したことを受け、同年12月以降7回開催。9月30日に報告書を公表し、貿易保険など「公的金融の活用」を「検討する必要がある」と強調しました。
貿易保険制度は1950年から政府が運営。2001年から独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が実務を引き継ぎ、政府がリスクを引き受けています。輸出企業など被保険者が支払う保険料を原資にし、戦争や自然災害、外国政府の契約破棄などによる損失をカバーしています。
1980〜90年代には、中南米債務危機や湾岸戦争で保険金支払いが急増して貿易保険財政は大赤字に陥り、一般会計からの繰り入れで穴埋めしました。国が債権回収の交渉をして一般会計に繰り戻すものの、「回収が難しいケースもある」(経済産業省)といいます。
貿易保険を活用すれば、武器輸出の損失補てんに税金が投入される危険があります。戦争法を強行成立させた安倍政権の軍事産業強化に向けた露骨な姿勢が表れています。
毎日新聞 2015年10月23日 東京夕刊
日本は「戦争でもうける国」になるのか−−。安全保障関連法の成立に続き、武器などの研究開発や調達、輸出をまとめて担う防衛装備庁が1日、発足した。昨年の「武器輸出三原則」撤廃と「防衛装備移転三原則(新三原則)」の閣議決定に伴い、武器輸出は「原則禁止」から「原則解禁」に大転換しており、これでアベノミクスの成長戦略に武器輸出を位置づける国の体制が組織上、整った。平和国家の根本が揺らいでいる。
◇1841件 新三原則に基づく昨年度の防衛装備輸出許可数
「防衛装備品の海外移転は国家戦略として推進すべきである」。防衛装備庁が走り出す直前の9月、日本経済団体連合会(経団連)は「防衛産業政策の実行に向けた提言」を発表した。提言は装備品の運用、教育・訓練の提供、適切な収益の確保なども重要な要素として挙げる。「防衛装備品」とは武器や兵器、それらの部品、関連する装備や技術のことだ。
軍事評論家の前田哲男さんが指摘する。「武器輸出三原則は国是とされ、対外的には憲法9条の具体例のような存在でしたが、財界にとっては目の上のたんこぶで、日本経団連になる前の経団連の時代から規制緩和や撤廃を言い続けてきた。その目標を達成したので、次のステップを目指そうというわけです」
そもそも財界は「自民党国防族、米国の軍産複合体とともに『安保ムラ』とも呼べる密接な関係を保ってきた」と前田さん。例えば「1兆円枠」ともいわれる次期支援戦闘機の選定・調達は関連装備のライセンス生産といったかたちで、日本企業に安定的な利益をもたらした。今回の武器輸出解禁、防衛装備庁の創設も、同じムラに属する「財」の要望に「政」が応えたものとも言えそうだ。
武器輸出三原則は1967年、佐藤栄作首相が▽共産圏▽国連決議で武器輸出が禁止された国▽国際紛争当事国とその恐れのある国−−に対して、武器を輸出してはならないと国会答弁したのが原形で、「三原則」として定着した。76年には三木武夫首相が国際紛争などの助長を回避するため、三原則以外の対象地域でも「武器輸出は慎む」として全面禁輸に拡大した。
しかし、実際には「例外措置の積み重ねで、三原則は足もとから崩されてきた」(前田さん)。83年の中曽根康弘首相の時、次期支援戦闘機の日米共同開発計画が持ち上がると、米国への武器技術の供与は例外とする初の政策転換をし、2000年代には「弾道ミサイル防衛」分野に広がった。民主党政権でも大幅に規制が緩和され、「例外措置」は計21件に達した。
一方、安倍晋三政権が昨年4月に閣議決定した新三原則では、「平和貢献・国際協力の推進や日本の安全保障に資する」「紛争当事国への輸出は禁止」など一定の要件を満たせば武器輸出を認める。目的外使用や第三国への移転には、日本政府の事前同意を相手国に義務付けた。
だが、早くも「抜け穴」が露呈した。政府は昨年7月、米企業への地対空誘導弾「パトリオット(PAC2)」の部品(標的を追尾するセンサーの一部)輸出を承認したが、このPAC2がカタールに再輸出されるというのだ。米企業はPAC2の部品のライセンスを握っている。日本からの輸出が「ライセンス元への納入」に該当する場合、日本側の事前同意なしに第三国に移転できるという例外規定がある。
「もともと武器輸出三原則の規制を取り払おうとして新三原則ができたので、これからも例外措置の積み重ねでますますザルのように、だだ漏れしていくだろう」と前田さんは危惧する。日本で生産された部品が、知らないうちに海外の紛争地で使われる可能性は否定できない。
新三原則に基づく昨年度の防衛装備の輸出許可は1841件に上る。
◇159億円 昨年度のF35A戦闘機契約額
新三原則への見直し以後、政府は着々と武器輸出の体制づくりを進めてきた。昨年6月に防衛省は今後10年を見据えた「防衛生産・技術基盤戦略」を決定して、1970年以来の武器の国産化方針を見直し、国際的な共同開発や民生品の活用を積極的に進める方針を打ち出した。これを受け、オーストラリアと防衛装備品・技術移転協定を結び、潜水艦の関連技術の共同研究を進めることで合意したほか、フランスとは無人システム分野などでの共同開発を想定した同協定を締結▽イギリスとは空対空ミサイルの共同研究▽インドとは国産救難飛行艇の供与の協議−−などが次々に決まった。
国産化方針見直しの背景について大阪大大学院の久保田ゆかり客員准教授(日米関係論)は「本来、軍事技術は自国で開発・生産するのが安全保障上は望ましい。ただ武器の調達にコストが掛かり過ぎるようになり、財政的な負担やリスクを減らせる国際共同開発が世界のすう勢になっています。多国間の枠に乗らないと軍事技術の開発に後れをとるという事情や、対中国をにらんだ友好国との関係強化や防衛産業基盤の強化という面もあります」と解説する。今年版の防衛白書によると、89年度契約の74式戦車は1台約3・9億円だが、昨年度契約の10式戦車は約10億円と約2・5倍、77年度契約のF4EJ戦闘機は1機約38億円だが、昨年度契約したF35A戦闘機は約159億円と約4倍にはね上がった。
企業の最大の狙いは、言うまでもなく「もうけ」だ。
「特に宇宙航空産業やサイバー分野では、開発費を1企業で負担するのはリスクが大きすぎるが、国の支援を受ければ先端技術の開発段階から参画できる。さらに特許を取れば自社のものとなり、多大な利益が期待できるビッグビジネスになる」と語るのは前田さんだ。「次期主力戦闘機F35については部品の生産に三菱重工などが加わっているが、開発当初から入っていないのでうまみは少ない。それでも参画したのは、さらにその次の主力戦闘機の開発で本格的に加わるための準備と言えます」
◇4020億ドル 世界トップ100社の武器などの売上高
世界トップ100社の2013年の防衛関連売上高は約4020億ドル(約48兆円、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所)に上る。そもそも日本の武器に国際競争力はあるのか。前田さんが続ける。「実戦の経験やデータがなく、いわゆる“血を吸った兵器”がない。例えば陸上自衛隊主力の10式戦車にしても、カタログ性能だけでは世界のバイヤーは信用しません。米国が期待するのはデュアルユース、日本の民生品で、軍用品にも使える技術の方です」
昨年6月、フランスで2年に1度開かれる兵器や災害対策設備などの国際展示会「ユーロサトリ」に、日本から13社が参加した。約1・5キロ先でも新聞が読めるほどの明るさで照らす災害用サーチライトや、超高感度監視カメラなど軍用品にも使える日本の民間技術が注目された。ロボットなどの無人技術や人工知能、小型化への関心も高いとされる。
「米国は、防衛産業においても対日優位を手放すつもりはない」と指摘するのは、九条科学者の会事務局長の本田浩邦独協大教授(米国経済論)だ。米国の狙いとして(1)日本に一定の利益を認めてライセンス生産や共同開発に参加させつつ、日本の強みを最大限引き出す(2)膨大になる軍需製品の開発を日本に負担させ、最新鋭の武器は米国が中心に開発して国際的軍事優位を維持(3)もはや米国企業が作らない古い製品を日本にライセンス生産させ、米国の兵器システムに組み込んで世界で売りさばく−−の3点を挙げる。
「日本が輸出を推進している原発がそうであるように、米国は防衛装備品でもパテント(特許)でもうける仕組みを固めようとしている」。本田教授の分析だ。
青井未帆学習院大大学院教授(憲法学)も「米国との共同開発に参加しても、米国は国益を損なうような最先端技術を開示することはあり得ない。むしろ大きな下請けにされる危険が高い」と懸念する一方、こうも訴える。「武器を売ってもうけるというのは、武器が使われることで利益を得ることを意味し、日本の防衛産業が誇りにしてきた意味での『防衛力の一翼を担う』という考え方とは全く違う。武器輸出は、経済合理性よりも、日本が憲法9条の下で平和国家として歩んできた価値を基準に考えるべきではないでしょうか」
前田さんは「日本の企業が『死の商人』として非難される事態が起きないとも限らない」と危惧する。「海外の戦争や紛争で日本の防衛装備が使われるようになれば、企業は空前の収益を上げられるかもしれませんが、平和で安全な社会を求める国内外の人たちに対して、良い企業文化なのだと胸を張れることなのか」
日本で製造された部品が組み込まれたミサイルで人が亡くなることを、私たちはどう納得すればよいのだろうか。【石塚孝志】
2015年10月2日 中日新聞朝刊
武器の輸出や他国との共同開発などを一元的に担う防衛省の外局「防衛装備庁」が一日、発足した。安倍政権は武器輸出の促進が、防衛産業の基盤強化や経済成長に役立つと説明する。だが、防衛装備移転三原則(昨年四月に閣議決定)による武器輸出解禁に沿った新組織の発足は、安全保障関連法に盛り込んだ自衛隊の海外活動の大幅な拡大とも連動している。日米の同盟関係に加え、武器輸出などの相手国に想定するオーストラリアや欧州諸国などとの軍事協力の強化にもつながる。
日本は、昨年四月に武器輸出を原則禁じていた武器輸出三原則を撤廃した。それ以降、米国以外でもオーストラリアの次期潜水艦の共同開発の受注競争に参加。英国、フランスとも武器の共同開発などを推進する方針で合意し、輸出や共同開発の相手国を増やそうとしている。
これらの国は、米国と共同の軍事作戦に参加する機会が多く、安保法に盛り込まれた他国軍への戦闘支援の対象国となる可能性がある。オーストラリアについては、中谷元・防衛相が国会審議で、米国以外で集団的自衛権行使の対象になりうるとして国名を具体的に挙げている。
今後、米国を含めた各国への日本の武器輸出が加速したり、武器の開発段階からの技術協力が進めば、日本と各国間の武器の仕様や部品などが共通化し、武器を扱う現場の部隊の一体的な運用がしやすい体制をつくることが可能になる。
自衛隊にとっては、集団的自衛権の行使や他国軍への弾薬提供などの戦闘支援を行う際の技術的な「壁」を低くすることができる。
こうした安倍政権の武器輸出政策を強く後押ししているのが経済界だ。経団連は、安保法が可決・成立する直前に、防衛産業政策に関する提言を公表。「防衛装備品の海外移転を国家戦略として進めるべきだ」と政府に要求している。
装備庁の渡辺秀明長官は一日の就任会見で「産業界の方々からも非常に強くご支援いただいた」と、経済界の後押しを歓迎した。
中谷氏は同日の記者会見で、装備庁について「諸外国と比べると、体制を検討していかなければならない部分がある」と課題を強調。組織の拡充も視野に、武器の輸出や共同開発を加速させたい考えを示した。
(中根政人)
小林豪 2015年9月28日21時40分 朝日新聞
経団連の榊原定征会長は28日の記者会見で、武器を含む防衛装備品の輸出や他国との共同開発について、「国家間の安全保障関係の強化に資する」と述べ、国家戦略として推進していくことの必要性を訴えた。
榊原氏は相手国との関係や安全保障をふまえ「官民による装備品の移転(輸出)や、その手続きを含む仕組みが必要だ」と指摘。「国の関与と管理のもとで(輸出を)推進すべきだ」と主張した。
経団連は安保関連法の成立で「自衛隊の活動を支える防衛産業の役割は一層高まる」とし、装備品の輸出や防衛産業への支援を政府に求める提言を15日にまとめた。ただ、安保関連法への国民の理解が進まないなか、経団連の性急な姿勢に批判も出ており、榊原氏は「安保法制でビジネスチャンスが増えるとか減るというのを意識しているわけではない」と理解を求めた。(小林豪)
主張/防衛装備庁の発足/“軍産複合体”への歩み許すな
2015年10月5日 9時35分 しんぶん赤旗
防衛省と陸海空自衛隊の武器取得関係部門を集約・統合した防衛装備庁が1日発足しました。武器の輸出や国際的な共同開発・生産を推進し、米国など他国との軍事協力を深化させるとともに、日本国内の軍事産業の育成・強化を図るのが、大きな狙いの一つです。専門家から“軍産複合体”の促進につながる危険も指摘されており、憲法の平和主義を踏みにじる重大問題です。
“死の商人”の要求受け
防衛装備庁は防衛省の外局として、武器の研究開発・取得・補給・管理などを一元的に扱います。安倍晋三政権が昨年4月に決定した「防衛装備移転三原則」に基づき、武器の輸出、国際共同開発・生産の促進も任務にします。
「防衛装備移転三原則」は、憲法の平和主義の下で歴代政権が維持するとしてきた武器輸出禁止の基本方針(武器輸出三原則)を撤廃し、武器輸出推進の道に公然と踏み出すものでした。
これを受け、昨年6月には防衛省が「防衛生産・技術基盤戦略」を発表し、政府を挙げて軍事生産・軍事技術の基盤を育成・強化する重要施策の一つとして、米国をはじめとする他国との武器の共同開発・生産の推進を打ち出しました。今年4月に策定された新たな「日米軍事協力の指針(ガイドライン)」でも、米国との「防衛装備・技術協力」の「発展・強化」が明記されました。
武器輸出推進への大転換の下、安倍政権は既に、米国への地対空ミサイルPAC2の部品輸出、英国との空対空ミサイルの共同研究、オーストラリアの次期潜水艦共同開発への受注競争参加などを進めています。こうした武器の輸出、国際共同開発・生産の動きは、防衛装備庁の発足によってさらに加速させられることになります。
防衛装備庁が大学や研究機関を軍事研究に動員し、「産」「官」に「学」を加え、軍事生産・軍事技術の基盤強化を図る体制づくりを狙っていることも重大です。
防衛省が今年度から始めた「安全保障技術研究推進制度」として、武器開発に適用可能な研究に資金提供をします。大学などを軍事研究の下請け機関に変質させ、憲法で保障された「学問の自由」を侵害するものとして許されません。
防衛装備庁の発足に当たり、軍事産業の利益拡大のため、財界の要求が強まっていることも見過ごしにできません。
経団連が「防衛装備庁の政策に産業界の考えを反映させる」ために発表した提言(9月15日)は、戦争法の成立による「自衛隊の国際的な役割の拡大」とそれを支える「防衛産業の役割」の高まりを指摘し、「政府の関連予算の拡充」、軍事費の一層の増額を要求しています。さらに“死の商人”として武器輸出を「国家戦略として推進すべき」だと求め、国の政策への介入姿勢をあらわにしています。
癒着構造はそのままに
防衛装備庁は、5兆円近い軍事予算の約4割に当たる2兆円を握るとされます。同庁の発足はもともと武器の取得をめぐる数々の不祥事を発端にしていましたが、天下りを通じた防衛省・自衛隊と軍事産業の癒着構造はそのまま残されました。問題の大本には一切手を付けず、憲法の平和主義を踏みにじる施策に奔走することなど到底許されません。
武器輸出イコール軍拡なのか 結果的には安全保障も強化される
2015.10.02 夕刊フジ
10月1日に防衛装備品の研究開発や調達、輸出を一元的に管理する防衛装備庁が発足した。安保法制と絡める形で、「安倍晋三政権が軍拡に手を貸す」などと批判する声もあるが、武器輸出が軍拡や戦争につながることになるのだろうか。
まず、日本の「武器輸出三原則等」を説明しよう。1967年4月21日に佐藤栄作首相(当時)が衆院決算委員会で答弁した「武器輸出三原則」は、(1)共産圏諸国向け(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向け(3)国際紛争の当事国又はその恐れのある国向け−の場合には武器輸出を認めないという政策だ。
一方、76年2月27日に三木武夫首相(同)が衆院予算委で答弁した「武器輸出に関する政府統一見解」は、(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする−という方針である。
いずれも武器の輸出許可方針であり、武器輸出禁止政策ではない。しかも法律に明記されたものでもなく、政府内にある運用方針だ。
この運用原則には例外が多く存在していた。米国向けの(1)武器技術の供与(2)弾道ミサイル防衛システムの共同開発・生産関係の武器輸出(3)弾道ミサイル防衛システム以外の共同開発・生産関係の武器輸出は、個別検討される。米国向けに限らないテロ・海賊対策支援等の案件についても、個別検討とされている。こうした例外措置は、その都度公表され、かなりの件数になっている。
2000年以降には、武器の国際共同開発・生産への参加という観点から、武器輸出三原則等の見直しという議論が出てきた。そして14年4月1日、武器輸出三原則に代わる新たな政府方針として、「防衛装備移転三原則」が制定された。
その内容は、(1)移転を禁止する場合の明確化(2)移転を認め得る場合の限定並びに厳格審査及び情報公開(3)目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保−となっており、武器輸出三原則の趣旨は守られている。
背景には、輸出によって兵器生産量が増加すれば、防衛庁の調達価格が低下するということがある。このため、民主党政権時代にも武器輸出三原則等の見直しは継続されていた。
日本が武器輸出国になることについて心理的な抵抗があるのもわかるが、既に米国、ロシア、英国、フランス、中国、イタリア、韓国、イスラエル、カナダは強固な軍需産業を有しており、日本が限定的に参入しても世界の大勢には影響ない。
武器については国際共同開発することで同盟国との関係強化につながり、結果的に安全保障も強化されるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
アメリカが購入し、シリアの反体制派に与え、反体制派があっさりISに奪われるという闇の販売ルートが成り立っているのですね。
トヨタは意図してやってはいないでしょうが、結果的にテロ行為に便乗してして商売が成り立っていることに対し、せめて社員は彼の地で起きている残酷な現実を知るべき。