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【日曜経済講座】
相次いだ市場政策の禁忌 中韓は「他山の石」 ニューヨーク駐在編集委員・松浦肇
少数株主の権利軽視や系列各社の株式持ち合いなど、エリオットは韓国型資本主義の痛いところを突いた。サムスン物産は金庫株を友好株主に渡すという商法の「グレーゾーン」で防衛を図り、裁判所はサムスン物産側の言い分を認めた。裁判沙汰で盛り上がる最中、多くの韓国メディアはエリオットに「出ていけ」と中立性を失した。ニューヨークの投資家の間では、エリオットの経営者の出自を差別的に描写する韓国の報道が大きく取り上げられた。
翻って、日本。90年代終わりから時価会計といった情報開示を強める政策を導入し、その後に不良債権を処理する嚆矢(こうし)となった。最近は持ち合い株といった旧弊にも手を付け始めた。
アベノミクスでウォール街を含めた海外勢が最も評価しているのは、経営者や機関投資家に説明責任を求める企業統治の強化だ。「市場の質」という観点から見た場合、この1年で日本は中韓に大きく水をあけており、年初来ベースで日本株が中韓株より強いのも首肯できる。
価格形成機能を担う「言論の自由」や売買の厚みを左右する「自由な資金移動」は、開放型の自由主義経済を支える大きな柱だ。これらを否定することは、市場政策の禁忌であり、中韓の失敗は日本にとって「他山の石」となる。