中国のサンマ“爆漁”は日本にとって脅威か杞憂か?
ダイヤモンド・オンライン 10月23日(金)8時0分配信
調理法もなじまない。そもそも「焼き魚」という文化は上海にはない。上海でサンマが買えるようになったとき、日本人主婦らは一尾10元前後の低価格のサンマを歓迎した。筆者もそのひとりだったが、家事を手伝ってくれる阿姨(アイ)さんが、大量に出る煙に難儀していたのを思い出す。中国では「煮る・蒸す」が魚料理の主な調理法なのだ。
● 遠洋漁業拡大の目算は 早くも狂い始めた
もともと中国では縁のない魚であるにもかかわらず、中国は早い段階からサンマに目をつけていた。
汚染や乱獲により近海の漁場をつぶしてしまった中国が、その先に見通すのが遠洋漁業である。「国民のタンパク質の確保に青い畑を耕す」という方向性を打ち出し、遠洋におけるマグロ、スルメイカ、サンマなどを「豊富な資源」だと評価したためだ。
遠洋漁業に乗り出そうとする中国だったが、順風満帆とは行かなかった。マグロ漁に至ってはNGO団体の強力な抗議を受ける羽目となり、中国政府はビンチョウマグロ船の建造許可を取り消さざるを得なくなった。
折しも今年7月、「北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約」(北太平洋漁業資源保存条約)が発効した。9月3日、その第1回会合が東京で開かれ、持続可能なサンマ漁についての議論が行われた。当初、中国はマグロに比べサンマ漁は“獲り放題”と目算したようだが、このサンマ資源についても「国際的な監視の目」に出鼻をくじかれた形だ。
そもそも、中国が大型漁船を仕立ててまでサンマ漁に乗り出したその理由は「意外と単純かもしれない」と専門家は見る。
台湾、ロシア、日本、韓国がサンマという資源に群がっている中で、中国も指をくわえてみているわけにはいかない――さしずめこんなところではないだろうか。
豊富な資源と狙ったものの、中国のサンマ市場は限定的であり、サンマ輸出大国を目論んだところで、消費国も限定的。加えて公海上でのサンマ漁も国際ルールが敷かれようとする今、中国の目算は完全に狂う可能性がある。
遠洋漁業への出遅れと漁船装備の性能にコンプレックスを抱き、この克服のために数々の政策を打ちだした中国だが、拙速な漁船の大型化は巨大なロスにもなりかねない。漁港の街・宮古の不安も杞憂になればいいのだが。
姫田小夏
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