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中国のサンマ“爆漁”は日本にとって脅威か杞憂か?

ダイヤモンド・オンライン 10月23日(金)8時0分配信

 この最新の大型漁船について、中国の地元紙は次のように伝えている。

 「2014年末に寧波の港を出港した船は、前年に進水した大型漁船で、高速スピードに加えて、レーダーや自動操舵、衛星通信など装備のハイテク化が進んでいる。1回の漁で数十トンを捕獲。それを80人の船員が加工し、8つの冷凍庫で保管する。数ヵ月の海上生活に耐えられるよう、数十トンの米・野菜・肉を搭載し、個別の部屋も与えている」

 注目すべきは「個別の部屋」だ。完成したこの大型漁船には2人部屋が確保されているという。この記事が伝えるのは、“ハイテク装備”以上に、船員のためのスペース確保の重要性であり、「大型漁船の稼働効率は想像以上に低い」という八戸庁舎の見解と一致する。

● 経済鈍化で造船需要が減り 中国はサンマ漁から撤退? 

 宮古市民が陥る“サンマパニック”。市民のひとりは「来年さらに中国の大型漁船が増えれば、漁港の街・宮古も衰退しかねない」と訴える。

 ところが「中国は早晩、サンマ漁から撤退するのではないか」とも思わせる動きがある。中国の国家政策に見直しが入った可能性があるのだ。国家海洋局が出版する『中国海洋報』はすでに今年初め、次のような報道を行っている。

 「漁船の建造市場は2015年、大幅に縮小するだろう。これまで大型漁船の建造は国策に支えられてきたが、国は遠洋漁業船の建造を減速させる動きに転じた」

 同紙は「すでに中国では、遠洋漁業船の新規建造の申請を受理しなくなった」と報じる。そのため、この業界から商業資本が続々と撤退しているというのだ。確かに今、中国の造船業は不振だ。需要を見込んで建造したはいいが、昨今に見る中国経済の鈍化により、大型船を中心にだぶつきが生じている。

 漁船建造が一転して縮小するこの動きについて、日本の漁業専門家は「大型漁船を仕立ててペイするほど、中国のサンマ需要はなかったのではないか」と推測する。

 実際、中国きっての大都市である上海でも、サンマは一般家庭にほとんど普及していない。メニューが多様化する中華料理のテーブルにすら上ることはない。魚介類の主役といえば依然マグロ、サーモン、ロブスターだ。

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最終更新:10月23日(金)8時0分

ダイヤモンド・オンライン

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