中国のサンマ“爆漁”は日本にとって脅威か杞憂か?
ダイヤモンド・オンライン 10月23日(金)8時0分配信
中国市場で出回るサンマは、台湾産のものが多い。台湾漁船は、冷凍室を装備した大型漁船を仕立て上げ、ロシア付近の公海に出向き、数ヵ月にわたり漁を繰り返す。多いときで年間20万トンを水揚げするが、その半分を中国市場に流すのだ。
ところが最近、サンマ輸入国である中国が、公海での大掛かりなサンマ漁に参入を始めた。中国船が大挙して公海上に進出し、実験段階を経て、本格的な漁に乗り出すようになったのは、昨2014年からのことである。
● 外国大型漁船による影響は 限定的という指摘も
今年のサンマ水揚量の異常な減少だが、全国サンマ棒受網漁業協同組合(全サンマ)によれば、ロシアを起点に銚子沖まで降りてきたサンマが、近年は南下しなくなったという。「好みの水温のところを目指して南下し、それがサンマの通り道を形成したが、近年はそれが沖合化する傾向にある」(同)というのだ。
その沖合で争奪を繰り返しているのが、台湾や中国の大型漁船だ。日本列島に沿ってサンマが降りてこないのは、サンマの群れが多くいるロシア付近の公海において根こそぎ乱獲されているためではないか、という疑念は膨らむばかりだ。
中国を含む外国の大型漁船による影響は、一体どの程度なのだろうか。
サンマなど水産資源の分布調査を手掛ける研究所に国立研究開発法人 水産総合研究センターがある。同センターの東北区水産研究所八戸庁舎は、外国の大型漁船の影響を「限定的だ」と見ている。その理由を次のように指摘する。
「外国の大型漁船は、日本の漁船に比べ5倍の規模がありますが、それが5倍の漁獲量を持つとは限りません。船上で行う冷凍作業に多くの人手を要するので、作業員を乗せるために大規模化しているに過ぎないのです」(同)
八戸庁舎によれば、今年のサンマ不漁は、中国を含む外国船が乱獲したから日本の漁船が獲れなかったわけではなく、「近海まで降りて来なかった年」だったためだという。そしてその一方で、「むしろ日本の方が獲っている」と現状を指摘する。
「日本の船は多いときで一日当たり100トン以上獲ることもあるのに比べ、外国船は40〜50トンを捕るのがせいぜい。中国船などが根こそぎとっているとは言い難いでしょう」(同)
他方、海洋進出という大きな国策のもとに遠洋漁業の発展を目論む中国は、マグロ漁船やサンマ漁船などを含む遠洋大型漁船600隻以上を2013年に完成させ、翌2014年から公海でのサンマ漁に本格的に乗り出した。
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